アート

2024.03.14 16:45

次なる時代を描くヒントは「研究」と「アート」にある? デサイロが初のイベント開催

田中友梨

──イベントのテーマである「生の実感とリアリティ」には、どのような意味が込められているのでしょうか。

岡田:プロジェクト立ち上げ時に4人の研究者の方々に「いま私たちがどんな時代を生きているのか」を考えるためのテーマを設定してください、と依頼しました。

元々4人が研究している大きなテーマを並べて見たときに、効率化や最適化ではない人間の根源的な在り方が見えてくるのではないかと期待していたんですが、やはりみなさんの研究がそれぞれ進んでいくなかで、「生の実感とリアリティ」というテーマにつながっていきました。


「DE-SILO EXPERIMENT 2024」では4人の研究への“応答”として、小説から音楽、映像、メディアアートまで、ジャンルも表現媒体も多様な11組のアーティストによる作品やパフォーマンスが披露される

「時間を共有する」制作アプローチ

──研究者である和田さん、コラボレーターである木原さんも、それぞれ手掛けたコラボレーションを教えてください。

和田:私はデザインやメディア研究をバックグラウンドとする研究者として、ことばと身体感覚の翻訳方法を探究しています。ただ、デサイロではもう少し個に寄ったテーマとして、「内言」を扱おうとしています。

内言とは、実際に声として発する「外言」ではない、自分の頭のなかに浮かぶイメージや言葉のこと。はっきりとした言語で表現される以前の感覚的なことばだからこそ、それを捉えるためには言語以外のアプローチが必要になります。

逆にいえば、内言の世界に触れられるようになれば、見落とされがちなその人固有の「実感」と向き合い、それを肯定しやすくなるかもしれない。「『生きているという実感』が灯る瞬間の探求」という研究テーマは、そんな考えから生まれました。

今回のイベントでは、このテーマのもとに音楽プロデューサーのマイカ・ルブテさん、アーティストコレクティブのKeikenのみなさんとそれぞれ協働し、ライブパフォーマンスや体験型インスタレーションを公開します。今、ちょうどプログラムの詳細を詰めているところです。


先鋭的な表現をつねに追求してきた音楽プロデューサー/シンガーソングライターのマイカ・ルブテが、「生きているという実感」というテーマに応答し新曲を制作。イベント当日は同曲の初演を含むライブパフォーマンスを披露する

岡田:
和田さんは、コラボレーター同士も巻き込みながら進めてもらっている印象があります。Keikenさん、マイカ・ルブテさんと一緒にワークショップなどを開催したりしていますよね。

和田:そうですね。言葉での対話はもちろんですが、それ以外の非言語的なコミュニケーションについても、じっくり時間をかけて進めています。その過程で、私がフィールドワークを行っている長島愛生園にマイカさんが来てくださったり、逆に私がKeikenのTanyaさんのお家に伺って一緒にゲームをしたりと、ただ「一緒に作品を作る」のではない時間の共有ができていて、とても刺激的です。
 

フィジカルとデジタルが融合する作品を手がけてきたアーティストコレクティブ・Keikenが、「生きているという実感」を解釈した体験型のインスタレーションを制作。イベント当日は展示会場となるOMOTESANDO MUSEUMで同作を体験できる
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文=松本友也

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