キャリア

2024.03.15 09:00

「卵子凍結」を民間保険で後押し キャリアで迷う女性に選択肢

Getty Images

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3月8日は国連が定めた「国際女性デー」だった。この日に合わせてイギリスの経済誌「エコノミスト」が発表したランキングによると、経済協力開発機構(OECD)の加盟国のうち主要な29カ国における女性の働きやすさにおいて、日本は、29カ国中27位だった。

男女の労働参加率や給与の差など10の指標に基づいた調査で、企業の管理職に占める女性の割合が15パーセント程度であることや、衆議院の女性議員の割合が10パーセント程度で低水準だったことなどが理由とされていた。

近年、女性の社会進出が国際的にも求められるなかで、日本でキャリアか出産かで悩む女性は少なくない。キャリアを優先すれば出産のタイミングが遅くならざるをえず、キャリアがようやく安定して子どもを望んだタイミングではなかなか授からず、不妊治療をしても最終的に子どものいない家庭となるケースは身近にある。

そんな状況下で、にわかに注目を集めているのが、「卵子凍結」だ。

卵子は誕生時で生涯の数が決まる

「卵子凍結」は、妊娠の可能性を上げるために、若い状態の卵子を取り出して保管する技術だ。

若い時の卵子を凍結して取っておき、出産や育児の環境が整ったときに融解(解凍)して体外受精などで妊娠・出産に結び付ける生殖医療で、受精する力や着床する力といった卵子の「質」の低下を回避して、将来の妊娠に備えたい女性に関心が高い。

もともとは女性のがん患者が抗がん剤や放射線の治療で不妊になる恐れがあるときに、出産の可能性を残すための技術だった。いまは、キャリアプランやライフプランをもとに、卵子凍結を前向きに検討する人がジワリ増えてきている状況だ。

実は、女性の卵子は、生まれた時点で生涯の卵子数が決まっている。出生後は新たにつくられることはなく、女性は卵子の元となる約200万個の原子卵胞を卵巣に貯えて産まれてくる。それが、10代で約20万個、20代で約10万個、30代で2~3万個というように質・量ともに減少し続けていく(図表1)。

出所:厚生労働省「知っていますか?男性のからだのこと、女性のからだのこと」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000035krs-att/2r98520000035kxv_1.pdf)

出所:厚生労働省「知っていますか?男性のからだのこと、女性のからだのこと」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000035krs-att/2r98520000035kxv_1.pdf

思春期になると、原始卵胞のなかから周期的に1つの卵子を成熟させ、排卵するようになるが、他の原子卵胞は排卵の出番が来るまで卵巣のなかで眠りながらも老化していくため、年齢とともに妊娠しにくくなったり、妊娠の異常が起きやすくなったりすることが避けられない。

ところで、「生理の回数と、卵子の減少の数の計算が合わない」と思う人もいるだろう。実は、およそひと月に1個の成熟した卵子が排卵されるまでの過程におけるホルモンの働きによって、他にも約1000個の原子卵胞が消えるしくみになっているため、生理1回につき約1000個のペースで減少していく計算だ。

そして、一般的に40歳~50歳代になってすべての卵子が失われると、閉経となる。

その消えてなくなるはずの複数の原子卵胞を、排卵直前まで成熟させて採取し、マイナス196度の液体窒素タンクで凍結保存し、将来の妊娠のために保管しておく技術が「卵子凍結」だ。妊娠を望んだタイミングで解凍し、卵子と精子を体外受精させて、受精卵を子宮に移植するといった流れで将来の妊娠・出産につなげることになる。

ただし、若い時の卵子のほうが妊娠しやすいのは確かではあるものの、卵子凍結は、将来の妊娠や出産を保証しているわけではない点は誤解のないようにしておきたい。男性側の要因での不妊もありえるし、高齢出産のリスクは卵子凍結では解決されるものではない。 

さらに卵子凍結の際には身体的な負担もある。また、やはり金銭面での負担も大きいため、費用対効果については十分な吟味が必要だ。
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