過保護・過干渉の「ラップ子育て」 3つの悪影響

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ここ最近、「plastic wrap parenting(ラップ子育て)」という言葉が英語圏で話題になっている。親が子どもを食品用ラップで包み込むようにして守ろうとし、子どもが外の世界でさまざまな体験を積んだり、失敗から学んだりするのを妨げてしまう子育ての在り方を指している。つまり、過保護・過干渉な子育てのことだ。

親がわが子を守ろうとするのは本能的な行動だが、「ラップ子育て」は子どもの発達とウェルビーイング(心身の健康と幸福)に悪影響を及ぼす恐れがある。

「ラップ子育て」には次のような特徴がある。

・過保護。子どもが危険な目に遭わないよう、親が徹底的に手段を講じる。たとえそのせいで、子どもにとっての成長と探求の機会が狭められるとしても。

・過干渉。親が子どもの一挙手一投足を見守り、子どもの行動を常に監視して介入する。

・マイクロマネジメント。子どもの選択や判断を必要以上にコントロールし、食生活から友人との付き合いまで、あらゆることを管理しようとする。

・失敗への恐れ。子どもの成功ばかりを気にかけ、子どもがリスクを取ったり失敗したりすることを禁じる。

こうした「ラップ子育て」は、子どもに予期せぬ悪影響をもたらしかねない。ここでは3つの悪影響について説明しよう。

1. 自分で決断を下せなくなる

「ラップ子育て」の環境で育つと、物事をなかなか決断できない人になってしまう可能性がある。親が子どもに代わってたいていの物事を決めると、子どもは自分で判断し、その結果を見極める訓練をする機会を奪われる。そのため大人になっても意思決定ができず、優柔不断になったり決断することに不安を抱いたりするようになる。

若年層の発達に関する学術誌Emerging Adulthoodに2022年に発表された研究結果は、これを裏付けている。この研究では、子どもに制約を課す子育てがティーンエイジャーの自主性にどのように影響するのかを明らかにした。

たとえば、厳しいルールや門限を課す、学業がらみの決断を厳しく監視する、揉めごとを解決しようとする際に介入する、といった親の行為は、ティーンエイジャーの自主性と決断力を著しく抑え込むことがわかった。注目に値するのは、親が思春期の子どもに対してこうした行動をとると、子どもは成人後も親に依存する傾向が高くなると示されたことだ。

意思決定の経験が少ないと、子どもが目標を設定したり長期的な計画を立てたりする力にも影響が及ぶ。異なる選択肢を天秤にかけ、それぞれどのような結果が得られるのかを比較検討するスキルが身についていない場合があるからだ。

他の人に大きく依存し、自分の代わりに決断を下してもらおうとするようになることもある。それは、子どもの無力感や自主性の欠乏につながる。

総合的にみると、決断力の欠如は、自信や主体性に大きな影響を与え、子どもの人生のさまざまな側面でウェルビーイングや成功を左右するだろう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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