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2024.03.18 07:15

第3のメディア「触覚」をよりリアルに共有できるテクノロジー

プレスリリースより

プレスリリースより

携帯電話やゲームコントローラーのバイブレーションは、操作や反応を触覚で確認できるばかりか、ゲームの臨場感を膨らませてくれるが、そうした触覚技術「ハプティクス」の研究開発が全世界で進められているが、産業技術総合研究所(産能研)は、何かの作業を行ったときの手の感触を、ほかの人たちと正確に共有できる「双方向リモート触覚伝達システム」を開発。その技術がもたらす可能性は大きい。

ハプティクス技術の市場規模は、2030年には今の2〜3倍になるとの予測もあるほど、視覚、聴覚に加わる第3のメディアとして大いに注目されている技術だ。VRゲームのリアリティーをさらに高めたり、ロボットハンドが何かを掴んだときの感触を遠くのオペレーターの手に伝えたりと、さまざまな分野で実用化が進んでいる。

ハプティクスで感触を伝える手段の代表格が「振動」だ。だが、現在広く使われている振動素子は振動周波数帯が150〜250ヘルツ程度と限られ、細かい変化を再現するのが難しい。また、振動のセンシングでは、余計な振動まで拾ってしまい、微妙な感触が伝えにくいという問題がある。そこで産能研は、東北大学、筑波大学、東北大学発のAIスタートアップAdansons(アダンソンズ)と共同で、極薄ハプティックMEMSを活用した「双方向リモート触覚伝達システム」を開発した。MEMSとは、機械的機構を搭載したマイクロチップのこと。

このシステムは、産能研の極薄MEMS素子、東北大学の「体感振動の強調・変調技術」(ISM)、Adansonsの「参照系AI」技術、筑波大学の「双方向リモート触覚伝達システム」で構成されている。極薄MEMS素子は手首や指先や工具に装着でき、人が感知できる広い周波数帯域(1〜1000ヘルツ)の振動の検知と再現ができる。ISMは、取得した振動の情報を人の触覚知覚特性にもとづいて計算を行い、デバイスで再生しやすい周波数に変換する。参照系AIは、入力信号から必要なデータのみを瞬時に抽出する。また、筑波大学のシステムは、オンライン会議などでは伝わりにくい非言語的行動を振動で伝えるなど、ソフトウェアによる効果の最大化が期待できる。

今後は、スポーツ中継でのプレイヤーの心理状態を観客に伝えるといったエンターテインメント部門での利用をはじめ、言葉では伝えにくい熟練工の技術継承などに応用できる「コンテンツ創出」に取り組むということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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