海外

2024.03.11 13:30

ビル・ゲイツらも出資、「CO2を出さない」製鉄企業Boston Metal

安井克至
同社は、ボストンのすぐ北のマサチューセッツ州ウォバーンにある本社にすでにテスト工場を持ち、先日はブラジルに本格的な工場をオープンさせた。カルネイロは、ブラジルでのグリーンスチールの製造事業が2026年までに売上高4億ドル、営業利益1億ドルを達成すると見込んでいる。

ボストン社の製鉄プロセスは、導電性の耐熱金属棒を使用して鉄鉱石を液化し、有害な副産物を含まない純粋な金属を分離するもので、工場が水力発電などのクリーンエネルギーを使用する限り、カーボンフリーの鉄鋼を製造することができる。また、希少な高品位の鉱石に頼るのではなく、低品位の鉱石から鉄鋼を作ることができる。同社によれば、これは他のグリーンスチール製造方法と比べ、コストと原材料の入手のしやすさの両面で重要な利点だという。

コストは割高になる可能性

ただし、従来の製鉄に比べて、どれだけコストが割高になるかはまだ未知数だ。鉄鋼は1ペニー単位のコストが重要であるコモディティな産業であり、新たな製鉄所の建設には莫大な費用がかかる。ボストン社の計算によれば、電力価格が1メガワット時あたり30ドル前後である限り、工場が年間100万トンから200万トンを生産するようになれば、コストは従来の製鉄と同等になるはずだという。

投資家の1人であるアルセロール・ミタルのファンドの責任者のイリーナ・ゴルブノワは、グリーンスチールが一時的に割高になることを認めている。例えば欧州においては、水素を利用したグリーンスチールの価格は、伝統的な高炉で生産される鉄よりも最低40%高いのが現状だという。「克服できないとは思いませんが、技術の発展と成熟が必要です」と彼は述べている。

しかし、ボストン社の共同創業者のサドウェイは、工場が「適切な価格の電気」を利用できる限り、価格設定はうまくいくはずだと語った。「補助金なしでより良い製品を安く作りたいのです。プレミアム価格は、準備ができていないか、失敗だったことを意味します」
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編集=上田裕資

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