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2024.02.01

「低炭素コンクリート」で地球温暖化を防ぐ米AI企業Concrete.aiの挑戦

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カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で気候変動対策を研究する組織であるインスティチュート・フォー・カーボン・マネージメント(ICM)は、過去10年間、コンクリートが環境に与える害を減らすための研究に取り組んできた。

彼らの研究成果に基づくスタートアップのConcrete.ai(コンクリートAI)は1月23日、人工知能(AI)ソフトウェアを使用した実地テストで、コンクリートの製造時に発生する二酸化炭素(CO2)排出量を30%削減し、同時にコストを1立方ヤード(約0.8立方メートル)あたり5ドル以上削減したと発表した。

ビルや道路の建設に使用されるコンクリートの主成分であるセメントは、世界のCO2排出量の8%を占めている。石灰石を熱で分解して製造されるセメントは、その製造プロセスで大量のCO2を発生させる。そのため、コンクリートに必要な強度を保ちつつセメントの量を減らすことができれば、CO2排出の大幅な削減につながる。

「コンクリートのCO2排出量は、航空機の3倍にもおよぶ。この材料の製造分野では、50年以上にわたって技術的な進歩が見られていない」とConcrete.ai のCEOであるアレックス・ホールはフォーブスに語った。

コンクリートには、必要な強度に応じて異なる量のセメントが使用されている。例えば、ビルの柱に使われるコンクリートは、その他の部分に使われるものよりも多くのセメントを必要とする。

ロサンゼルスを拠点とするConcrete.aiは、生成AIを使ってコンクリートの配合を最適化している。例えば、その製造業者に対して、セメントの代わりにフライアッシュ(石炭火力発電所で生じる灰の一種)を使用させたり、セメントの使用量を減らすために岩石や骨材を混入するよう指示している。その目標は、セメントの量を減らしつつ、必要な強度を備えたコンクリートを作ることだ。

現時点までに、このアーリーステージのスタートアップは3社の商業顧客を獲得しており、間もなく4社目と契約する予定という。Concrete.aiは現在、年内に80の工場での導入を目指しており、売上高は、昨年のわずか25万ドルから、2024年には150万ドル(約2億2000万円)に達する見通しという。

「当社の最終的な目標は、コンクリートの配合を最適化することで、世界のCO2排出量を年間5億トン削減することだ」とホールは語った。

競合にはビル・ゲイツの投資先も

この分野のイノベーションは近年、起業家や投資家からますます注目を集めている。コロラド大学からスピンアウトしたPrometheus Materials(プロメテウス・マテリアルズ)は、サンゴや貝殻が自然に形成されるのと同様のプロセスを用いて、藻類をセメントに変えるプロセスを開発した。

一方、ビル・ゲイツのブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズが支援するTerra CO2(テラCO2)は、セメントに代わる別の低炭素セメントを開発した。さらに、投資会社DCVCからの支援を受けたBrimstone Energy(ブリムストーン・エナジー)は、カーボン・マイナス・セメントの商品化に取り組んでいる。
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編集=上田裕資

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