その翌年にホールは、別の建設会社で働きながら、UCLAからスピンアウトした企業のCarbonBuilt(カーボン・ビルト)の顧問に就任した。
一方、UCLAで准教授を務める38歳の計算材料科学者のマチュー・バウシーは、その当時、後にConcrete.aiを支えることになるAIモデルの開発に取り組んでいた。「私たちは10年以上、AIと機械学習を使って、コンクリートのような伝統的な材料を再発明する方法に取り組んでいたのです」と彼は語る。
現在はConcrete.aiのCTOを務めるバウシーとサント教授は2021年に、その研究をConcrete.aiとしてスピンアウトさせた。そして、ホールは同年9月に同社のCEOに就任した。Concrete.aiは、これまで累計300万ドルを調達しており、研究開発を拡大するためにさらに200万ドルを調達しようとしている。
世界の年間セメント使用量は40億トン以上
過去3年間に渡り、Concrete.aiは全米のコンクリート製造業者と共同でそのAIモデルをテストしており、その配合を最適化したコンクリートの量は、累計200万立方ヤードを超えている。同社によると、ミックスを最適化して必要なセメント量を減らすことで、1立方ヤードあたり平均5.04ドルのコストを節約し、同時に平均30%のCO2排出量を削減したという。イリノイ州を含む3州で事業を展開するVCNAプレーリー・マテリアルズの副社長のクリス・ラップは、初期の実地試験をConcrete.aiと実施した。「過去4、5年の間に、市場はCO2排出量をこれまで以上に認識するようになっており、私たちもそのプレッシャーを感じている」と彼は語る。
中西部に25の工場を持つプレーリー社は現在、工場の約半数にConcrete.aiのソリューションを導入しており、ラップが2万~3万立方ヤードのコンクリートを必要とすると予想する大規模な産業用倉庫プロジェクトのコンクリートを最適化するために使用している。比較のためにいうと、1台のコンクリートトラックが運搬する容量は、わずか8立方ヤードのみだ。
バウシーによると世界のセメント使用量は、1人あたり毎年1トンにも達しているという。
「私たちは、ある時点で決断しなければならないのです。新しい建物を作ったり、今あるインフラを修理したいのであれば、今後もセメントを使い続け、それをより効率的に使用する方法を考えなければならないのです」と彼は語った。
(forbes.com 原文)