とりわけ野心的な気候ポリシーを掲げる企業が、最も移行目標に反していることも判明した。イタリアのエニやスペインのレプソルは、2030年までに化石燃料を30~35%削減すると約束する一方で、経営幹部の報酬のそれぞれ29%と23%はいまだ生産成長目標に基づいている。
「エネルギー移行は加速しており、石油・ガス会社は需要ピークを見据えた計画を立てなければならない」と、カーボントラッカーの石油・ガス・炭鉱部門責任者のマイク・コフィンは言う。「投資家は、経営幹部の報酬が増産と新たな長期サイクル資産の開発を奨励し続けている点について、それが企業の公表する戦略と矛盾する場合には特に、懸念を示すべきだ」
「アセットオーナーとアセットマネジャーは議決権を行使して、経営幹部に最善の長期的利益にかなった行動をとらせる必要がある」
報告書によれば、サウジアラムコ、ペトロブラス(ブラジル石油公社)、中国石油化工(シノペック)などの国有石油会社は、報酬ポリシーの開示が不十分なままだ。また、欧州企業は米国企業よりも、再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーにインセンティブ報酬を支払う傾向が強いという。
カーボントラッカーが分析した25社のうち、10社がエネルギー移行への対応に関する報酬指標を導入していたが、いずれも新事業分野への多角化をインセンティブ報酬の基準としていた。CO2排出量削減に向けた広範な自社目標に直接合致するインセンティブ報酬基準を定めているのは5社にすぎなかった。
(forbes.com 原文)