アート

2024.03.13 09:15

藝大発、音のスタートアップ 「聴きすぎない音楽」で社会に貢献

心地よさを生む、3つの特徴

soundtopeWBには楽譜はなく、音楽生成のアルゴリズム、AIがその場で音を組み合わせて音と音楽を生み出している。自動生成音楽という仕組み自体は他にもあるが、soundtopeWBには次の3つの特徴がある。
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1つ目は、アーティストとAIの協働だ。コンピュータだけで音楽を生成するのではなく、作曲を学んだ作家たちの手によって、人が快適に感じる音の素材、音のパレットで構成され、アートフルな音空間を紡ぎ出している。

2つ目は、リアルタイムで変化させ、無限に生成できること。CDや配信の音楽は、機械的に再生することはできても、動的に変化させることは難しい。soundtopeWBは時間帯や天気の情報を踏まえ、時間の経過とともに、徐々に変化させながら音楽を生成する。

3つ目がエビデンスだ。被験者50人を公募し、soundtopeWB使用によるウェルビーイングへの効果を検証実験した。体験後は「休憩」後に比べてネガティブな気分状態を総合的に表すTMD(Total Mood Disturbance)のスコアが有意に改善する効果検証結果が得られたという。

生成音楽の活用事例

もともとsoundtopeは、オフィスや施設など環境に合わせた音楽を自動生成するソリューションとして誕生した。アプリ、Webサービス、据え置き型、組込み型など、プラットフォームはクライアントとシーンに合わせることができる。
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これまで、小学館の「ずかんミュージアム銀座」、味の素AGFの「Work Design Coffee」、大阪芸術大学アートサイエンス学科棟などで活用されているほか、街に応用した西新宿5G Sounding Cityプロジェクトもある。

宣伝やBGMなど、街にはさまざまな音が氾濫し、人を疲れさせてしまう。soundtopeは天気や騒音など人の心理に影響するさまざまなパラメータを検出し、それに基づいて楽器音、自然音を組み合わせた音を提供する。視覚によるデザインに比べると、聴覚のデザインにはまだ大きな可能性が眠っているといえる。

「soundtopeは完全なクライアントワークというわけではなくて、クライアントと一緒に研究を重ね要望に応えていくやり方。引き続き多くの企業と協業を広げながら、soundtopeの研究と収益化を両立させていきたい」(松尾)
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取材・文=鶴岡優子

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美大で覚醒するスタートアップ

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