暮らし

2024.04.09 09:15

OEM100%から内製率60%へ 「竹の箸」が海外で勝ちまくる理由

自身も34歳と若い山崎さん、ショップをオープンした動機にも若者への眼差しが見てとれた。「24歳で町に帰ってきたとき、仕事は楽しいけど、仕事以外にすることが何もないなと思って。カフェもない、デートスポットもない、おしゃれなバイト先もない……(笑)うちの店が、少しでも若い子たちに居場所を提供できたら良いなと思っています」

そんな「拝啓」の店名の由来は、察しのとおり手紙だ。山崎さんの頭には、2通の手紙があった。1通目の送り手は、ヤマチク。竹の箸の魅力を、世界中のものづくりを、南関町で暮らす人々に伝える手紙だ。ショップで取り扱う生活の道具や食品は、すべて実際に使ったり食べたりして良いと思ったものだという。「この生姜シロップ、南関の人も好きなんじゃないかな、と思って仕入れました。結果は大正解!」と笑う山崎さん。愛すべき隣人に語りかけるように、書き綴るように、仕入れや陳列を行っていることが伝わる。

2通目は、箸を贈る人から贈られる人への手紙だ。山崎さんは「催事や工場開放のイベントで気付いたことですが、自分用の箸だけを買う人って限られているんですよね。お客様は大切な誰かに向けて、その人を思い浮かべながら箸を選んでいる。その姿が、手紙を綴るようで素敵だなと思って」

ショップを運営する日々は「想像以上に大変ですが、可能性を感じて楽しいです」と破顔する山崎さん。販売拠点ができたことで、よりデザインの自由度も上がり、企画力も加速度的に伸びていくと予想している。

「実は春から、社内に新設したインキュベーション施設の運営も始めます。学生さんや行政と一緒に、これからのヤマチクや、町の未来を考えていくラボのような場所にできたらと思っています」と完成したばかりのサインを手に、明るい笑顔が浮かんだ。

photo:大塚淑子

拝啓、の先に続く言葉を探しに、思わず足を運びたくなる。小さな町の小さな工場から生まれた唯一無二のファクトリーショップは、地域の未来を照らす灯となり、これからも輝きを増していくだろう。

(本記事は「読むふるさとチョイス」からの転載記事です。)

文=井関麻子 写真=大塚淑子

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