つわりの治療法発見につながるか
GDF15が妊娠悪阻を引き起こすメカニズムについて研究が進めば、重いつわりの治療法や予防策が見つかるかもしれない。GDF15のような信頼できるバイオマーカーを同定できれば、早期の診断や介入へとつながり、妊娠悪阻に苦しむ妊婦の症状を改善できる可能性がある。医療関係者が妊娠悪阻のメカニズムについて理解を深めたり、症状軽減効果の高い治療法を開発したりするのにも役立つだろう。注目すべきは、妊娠中に増加するGDF15は主に胎児によって産生され、これまでは考えられてきたように母体由来ではない点だ。
また、2018年の研究では、妊娠悪阻を発症しやすい遺伝子変異を持つ人において、妊娠中のGDF15値の上昇が、激しい吐気や嘔吐の症状を誘発する可能性が高いことが示唆されている。
GDF15の働きを阻害する効果を持つ薬剤はあり、主にがん患者の慢性的な吐き気や嘔吐を抑えるために使われている。これらの薬を妊娠悪阻の治療に活用できる可能性がある。そうすれば、症状を和らげたり合併症の発症を最小限に抑えたりできるかもしれない。
上で紹介したネイチャー掲載の研究では、妊娠悪阻や他の妊娠合併症のリスクを予測できる血液検査も特定された。この検査を妊婦にうけてもらって早期に介入できれば、症状の悪化を防げる可能性がある。これらの知見は、妊娠悪阻と関連合併症の効果的な治療法の開発に向けた有望な道筋を示すものだ。
つわりの原因解明へ大きな一歩
今回の研究は、つわりと妊娠悪阻の原因解明に向けた大きな一歩だ。妊娠悪阻と胎児由来のホルモンの関係を明らかにすることで、症状の予防策と治療法を研究する新たな機会が拓かれたのだ。得られた知見によって妊娠悪阻への対処法が大きく改善されれば、合併症や妊産婦死亡のリスク低減につながるだろう。GDF15のシグナル伝達経路に関する研究を進めていくことは、激しい吐き気や嘔吐に苦しむ妊婦にとって期待のできる、より明るい未来への希望をもたらすものだ。
(forbes.com 原文)