妊娠中の「つわり」の原因に関する研究、吐き気や嘔吐の改善につながるか

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妊娠中に吐き気を催したり嘔吐したりする「つわり」は一般的な症状で、妊婦のおよそ70%が経験する。しかし、つわりが重くなると、命にかかわる場合がある。激しい嘔吐を繰り返して日常生活に支障をきたし、体重減少や電解質異常を引き起こしている状態を「妊娠悪阻」といい、母子双方に長期的な健康リスクをもたらす恐れがある。妊娠悪阻は、米国で妊娠初期における最大の入院理由となっている

問題は、これほど激しい吐き気や嘔吐の症状を引き起こす原因は何なのか、そして、どのような対策が考えられるかだ。

重いつわりはなぜ起こるのか

英科学誌ネイチャーに2023年12月に掲載された研究論文によると、妊娠悪阻は、胎児が作り出す「成長分化因子15(GDF15)」というホルモンによって引き起こされている可能性がある。この研究では、母体の血中GDF15濃度が、妊娠初期の0~12週に着実に上昇していることが明らかになった。

また、GDF15と妊娠中の吐き気や嘔吐に関連性がある可能性も判明した。GDF15が激しい吐き気に関係していることが示されたのは、重要な発見だ。

また、GDF15と妊娠中の吐き気や嘔吐に関連性があり得ることもわかった。GDF15が激しい吐き気に関連していることが示されたのは、重要な発見だ。研究チームはGDF15遺伝子に発現するH202D変異体を用いて、異なるアミノ酸残基をもつ2種類のGDF15を特定する方法を開発。GDF15を構成する202番目のアミノ酸がヒスチジン(H)残基か、アスパラギン酸(D)残基かを質量分析で識別できるようにした。

妊娠悪阻の症状とリスク

妊娠悪阻は、激しい嘔吐を繰り返すのが特徴だ。症状は一般的なつわりよりも重く、昼夜を問わずひっきりなしに吐き気と嘔吐に見舞われ、脱水症状や栄養失調で体が衰弱し、体重が減少する。電解質バランスが乱れ、けいれん発作や筋力低下、不整脈などの深刻な健康障害を引き起こすこともある。

母親が妊娠悪阻に苦しみ、十分な栄養を摂取できなければ、胎児の成長にも影響が及んでしまう

吐き気や嘔吐、妊娠悪阻を経験する妊婦は、そうした症状のない妊婦と比べて血中のGDF15濃度が高い。GDF15は、ストレスや炎症、組織損傷に反応して産生されるタンパク質であり、食欲、エネルギーバランス、体重を制御するとされている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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