今、リーダーにこそ求められる感情的知性(Emotional Intelligence)とは──。同分野の世界的権威である、トラヴィス・ブラッドベリーへの独占インタビュー。
「リーダーシップとは、共通の偉大な目標に向かって人々を動機づけできるかどうか、だ」と語るのは、2009年に米国で出版され、世界150カ国で25の言語に翻訳されてベストセラーとなった『Emotional Intelligence 2.0(邦訳:『EQ2.0──「心の知能指数」を高める66のテクニック』関美和・訳、サンガ・刊)』の共著者で、EQの世界的権威であるトラヴィス・ブラッドベリーだ。昨年、14年ぶりに新著を発表した彼に、EQとリーダーシップについて話を聞いた。
──世界的ベストセラーとなった前著から14年を経て昨年8月に新著『Emotional Intelligence Habits(未邦訳)』を出版した。新著で最も伝えたかったことは何か。
トラヴィス・ブラッドベリー(以下、ブラッドベリー):『Emotional Intelligence 2.0』が人気となり、私が数年かけて学んだのは、人々は真に自分の感情的知性(Emotional Intelligence、EQ)を向上させるための戦略や具体的な方法を知りたがっている、ということだ。それに特化した本を書きたいと思った。そして、戦略とは何だろうと考えたとき、「Habits(習慣)」だった。EQを高めるために人々が身につけたいと思っている新しい行動のことだ。
私が共同創設したタレントスマートではEQの評価テスト「Appraisal test®︎」を提供しているが、これまで200万人以上に実施してわかったことは、約36%の人しか自身の感情に意識的でないことだ。私たちは毎日約400もの感情的経験をしているが、多くの人はこれらの感情を理解し、コントロールする代わりに、成り行きに任せている。もうひとつは、自身の感情に何が起こっているのかを理解するだけではなく、相手が経験していること、相手の目を通して世界がどのように見えるかを理解する“EQの社会的認識”と呼ばれるスキルが、著しく低い傾向にあることだ。私たちは、会話のなかで実際に目の前にいる相手よりも、自分が次に何を言おうか、また、他者の発言がいかに影響力があるか、ということに集中してしまう傾向がある。これは残念なことだ。上記のスキルに優れている人は一握りしかいない。良い決断には、事実以上の知識が必要だ。自己認識と感情的な熟練を、最も必要なときに使うことが求められる。
習慣は自己改良の「複利」であるということが、私が新著でもっとも伝えたかったメッセージだ。どんなに小さなステップでも、EQを向上させるための新しい習慣を毎日取り入れることができると、時間とともに非常に大きな変化につながる。