ライフスタイル

2024.02.10 15:00

レジデンスと新ブランドが東京に。アマンCEO単独インタビュー

もうひとつの目玉は、インタビューの会場となったアマンレジデンス 東京だ。54階から64階に構える住居は91戸、価格は非公開だが、その機密性もあって一層の注目を集めている。

「困難もあったが、手がけたなかでも最高のものができた」と評するドロニンは、共有スペースのインテリアについて「暖炉の火、左官壁の土、木のテーブル、庭石をイメージしたオブジェ、そして東京タワーを見下ろす素晴らしい眺望。火、土、木、石など、アジアの自然の要素を織り込んだ」と熱っぽく語る。世界的にもレジデンス事業は好調で、26年にマイアミにオープン予定の物件は3週間で完売、米国では同年にビバリーヒルズの開業も控えている。

競争が激化するラグジュアリーホテル業界におけるアマンのブランディングについて、ドロニンは「ユニークなロケーション」を強みとしてあげる。例えば、3分の1に当たる15軒のリゾートは世界遺産エリアにあるが、それは「その土地の自然と文化をリスペクトした開発を続けてきたから得られている」もので、数年中にもサウジアラビアの世界遺産内に「アマン アルウラ」の開業が控えているという。ツーリズム全体が落ち込んだコロナ禍中も、「新規開業は、より多くの顧客層につながる手段」と考え、開発を続けてきた。27年に誕生する「アマン ニセコ」もそのひとつ。また、どの地でも最良のサービスを提供すべく、創業の地、タイに教育施設をつくり、従業員のトレーニングを強化。コロナ禍が明けた今、期待していた以上の需要で、アマン全体の稼働率は19年を上回る好調ぶりを示しているという。

「ライフスタイルブランド」として

近年ではホテル事業以外の展開にも力を入れている。18年以降、スキンケアアイテムやフレグランスなどの販売を始め、現在はウェアやレザー小物まで扱う「アマン エッセンシャル」へと拡大。「ホテルブランド」からトータルな「ライフスタイルブランド」への転換を始めている。ブティックの売り上げも当初の4~5倍と好調だ。

秘境のリゾート、都市型ホテル、ジャヌ、レジデンスやライフスタイルコレクションと多角展開するなか、この先どこに注力していくのか。聞けば、「コンビネーションです」と言う。都市部で人の目に触れる機会を増やし、日々使う商品を提供してより身近なものとし、新たな顧客層を取り込む。多角展開はビジネスのリスクヘッジであるだけでなく、エキゾティックな人里離れたアマンへとつなぐ「パイプライン」でもあるのだ。そして訪れた人が、いずれレジデンスの住民となる、かもしれない。

「人に見つけてもらわなければならない」リゾートから、より接点の多いラグジュアリー・ライフスタイルブランドへ。新しく生まれるジャヌ東京とアマンレジデンス 東京は、そんなアクティブな方向転換の象徴になるだろうか。
グリーン&ウェルネスを掲げ、森ビルが30年以上かけて完成させ た「麻布台ヒルズ」。アマンレジデンス 東京は、そのメインタワーとして日本一の高さを誇るビルの54階から64階に位置する。 専用エレベーターロビーから上った先は、まるでホテルのエントランス。プライバシーが保たれた空間には、居住者専用のラウンジ、ライブラリー、1400㎡のアマン・スパも備わり、そのどこからも都心のパノラマ景色を望 むことができる。

グリーン&ウェルネスを掲げ、森ビルが30年以上かけて完成させた「麻布台ヒルズ」。アマンレジデンス 東京は、そのメインタワーとして日本一の高さを誇るビルの54階から64階に位置する。専用エレベーターロビーから上った先は、まるでホテルのエントランス。プライバシーが保たれた空間には、居住者専用のラウンジ、ライブラリー、1400㎡のアマン・スパも備わり、そのどこからも都心のパノラマ景色を望むことができる。


ヴラッド・ドロニン◎アマン・グループ会長/CEO/オーナー、およびOKOグループ創業者兼CEO。高級住宅、商業施設、ホスピタリティ施設における国際的な投資家兼不動産開発者として30年以上の経験をもつ。2014年にアマン・グループの代表に就任。2020年に姉妹ブランドのジャヌ(Janu)を発表、2024年に東京に開業予定。

文=仲山今日子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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