レジデンスと新ブランドが東京に。アマンCEO単独インタビュー

ヴラッド・ドロニン|アマン・グループ会長兼CEO

11月、東京に新たなヒルズが誕生した。森ビルが30年以上をかけて再開発した「麻布台ヒルズ」だ。そのメインタワーの高さは約330m。竣工時点で日本一のランドマークとなった。こうしたビルの最上階といえば展望台かレストランか、と思いきや、そうではない。文化に力を注ぐ森ビルだが、美術館でもない。そこに浮かぶのはエクスクルーシブな住居「アマンレジデンス 東京」だ。

麻布台ヒルズにはもうひとつ、アマンの新ブランド「ジャヌ」初のホテルも2024年3月に開業する。話題の一等地にふたつの新たなコンセプトができることはどんな意味をもつのか。メディアになかなか応じないアマンのヴラッド・ドロニン会長兼CEOに、グループが描く未来について聞いた。

国際的な投資家兼不動産開発者であり、もともと熱狂的なアマン愛好者“ アマンジャンキー ”だったドロニンが、アマンを愛するが故にビジネスを買い取った経緯はよく知られている。アマンジャンキー、つまり世界各地に赴く旅好きな彼ではあるが、日本は特に思い入れの深い場所だ。1991年に初めて来日してから頻繁に訪れては「いつも新しい発見をしている」という。麻布台ヒルズのプロジェクトは、森ビルとの綿密な連携によるもので、ドロニン自身も工事期間中も何度も足を運び、森ビルの辻慎吾社長とコミュニケーションを重ねた。

「森ビル側の要求レベルは非常に高く、これまでの経験と知識をすべて注ぎ込んだ。彼らのエネルギーと細部へのこだわりに、自分も『前世は日本人だったのではないか』と思うほど共感した」と振り返る。

ニーズの変化を追い風に

アマン創業から35年。新ブランドとなるジャヌ誕生の背景には、ドロニンがブランドの成長と同時に感じた顧客の変化がある。かつては50代以上の富裕層がメインだったが、近年、IT関連で成功した若手の厚みが増した。そんな中で、東京、ニューヨークなど都市型ホテルも開業。「忙しく働く彼らは、情報があふれる世界の中でスイッチオフできる場所を求めている。アマンがそのニーズに応えている」とドロニン。年月を経て、若年層が増えたことを「喜ばしい変化」として受け止めている。

一方で、親に連れられて滞在し、アマンの美意識を感じながら育った子ども世代に対する新しいアプローチの必要性も感じていた。そこで「平和でプライバシーが守られる家」であるアマンに対して、「ソーシャルでエネルギーを感じる場所」として、20年にジャヌを発表。部屋数も多く、人とのつながりを促すような空間で、姉妹ブランドとしての相乗効果を狙っていく。

「ジャヌとは、サンスクリット語で『魂』という意味。私にとって魂とは、人の心のなかから自然に湧き上がってくるエネルギー。そういった意味で、世界初のジャヌを日本、それも躍動感あふれる東京からスタートするのは自然なことだった」
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文=仲山今日子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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