食&酒

2024.02.03 15:00

師匠の使命、弟子の恩返し|三澤世奈×小山薫堂スペシャル対談(後編)

Forbes JAPAN編集部
三澤:皆さんに共通する部分などあれば教えていただきたいです。

小山:2つあります。すべてにおいて謙虚であること。そして歳を重ねても向上心を忘れないこと。例えば、三味線の先生に一日の時間割を尋ねたら、「毎日10時間くらい稽古している」と言うんです。ご高齢だからご自身の先生はもう亡くなっている。それでどうやって稽古するのかというと、師匠の演奏が録音されたカセットテープを毎日聴いているんですよ。「そこに近づくように頑張っています」と話されて、本当に頭が下がりました。80代の陶芸の大家も「最近ようやく器のことがわかってきました」と言うんです。

三澤:鍛錬に終わりはないんですね。

小山:みなさん、これがゴールだと思わずに、「もっと高いところがあるんだ」と思って、山を登り続けている方が多いですね。そういう高みというか、昨日よりも1ミリでも良いものを作りたいという思いを、誰もがもっていらっしゃるという印象をもちました。三澤さんはこれからどんなふうになっていきたいですか。

三澤:人間国宝の皆さんからの話題で恐れ多いですけど、死ぬ直前までやっていたいです。自分はつくっているときがいちばん楽しいんだなと、最近思うようになりました。

小山:続けることでしかわからない世界、というものを僕は尊敬していますし、三澤さんの今後を心から応援しています。

今月の一皿


小山が愛してやまない「夢民」のカレー。オーナー夫妻からオリジナルレシピを伝授され、再現した逸品。

blank


都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。


三澤世奈◎1989年、群馬県生まれ。江戸切子職人。2012年、明治大学商学部卒業。14年に堀口切子に入社。19年より、同社においてブランド「SENA MISAWA」をプロデュース。「日常空間に心地よい切子」をテーマに自らの切子を追い求め、日々技を磨く。

小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。

写真=金 洋秀

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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