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2024.01.30 11:15

【ダボス現地リポート(4)】日本発ユニコーンが見た「ダボス会議」のリアル

世界経済フォーラム第54回年次総会(通称「ダボス会議」)が1月19日に閉幕した。今年は125カ国以上から350人の首脳や閣僚を含む約3000人のリーダーが参加。セッションやワークショップの数は450を超え、「信頼の再構築へ」というテーマを軸に対話や議論が繰り広げられた。

官民の協力を通じて世界情勢の改善に取り組む世界経済フォーラムの年次総会だけに、ダボスでは例年、世界各国から来た政府高官やリーダーたちの言動に注目が集まる。今年も多くのメディアがウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領や中国の李強首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領など各国トップの発言を大きく報じた。

ダボスは歴史の転換点を数多く生み出してきた場所だ。そこに世界の今を動かすリーダーが集結するのだから、彼らの動向に目が向くのは当然だろう。だが、2度目の参加となった今回実感したのは、メディアが報じることのないクローズドな会合や偶発的な対話がもたらす価値の大きさだ。

ダボスでは会場内のいたるところで官民のリーダーたちが顔を合わせ、時には飲み物やスナックを片手に対話を繰り広げる。原則、そこには広報担当者や秘書はいない。また、招待制のセッションやワークショップも数多く実施される。「取材はNG」という場所やシーンも少なくない。本音で話せる環境づくりを重視するためだ。

胸襟を開き、率直な意見を交換し議論を深める。そこから持続可能な社会や経済、地球のために新たなパートナーシップやコラボレーションが生まれ、ビジネスが動き、世界が動き出す。会場内を歩き回り、さまざまな国の人たちと話をしながら改めてダボス会議の本質はそこにあると感じた。

実際のところ、世界経済フォーラムの年次総会は参加者に何をもたらしているのだろうか。この問いの答えを探るために、今回は世界経済フォーラムの「ユニコーン」メンバーとして総会に初参加したTBMとティアフォーのCEOを取材。スイスの山奥にある極寒のリゾート地ダボスで2人は何を思い、どんな収穫を得たのか。

まず話を聞いたのはTBMの山﨑敦義CEOだ。TBMは石油由来樹脂の使用量やCO2排出量を削減したプラスチック代替製品や、木を使わずに製造時の水使用量を大幅に抑えて紙の代替製品を作ることができる新素材「LIMEX」(ライメックス)の開発・製造を中心に手がけるスタートアップだ。2023年6月からユニコーン・コミュニティに参画している。

開催3日目の午後に会った山﨑は開口一番、「大興奮です。マイナス10度以下でも寒さを感じない」と勢いよく語り出した。何が山﨑を高揚させたのか。

「たまたま横にいた人と名刺交換したら中東地域の財閥のトップだったり、インドの素材系商社のトップだったりする。積極的になればなるほど人や情報にアクセスできて、自分たちのビジネスの大義や目指すべき規模に気づかせてもらうことも多い。しかも、私たちが扱っているのは素材なので官民や業界問わずいろんな人や企業とつながっていける。楽しくて大興奮です」

TBMは今回の年次総会でカーボンリサイクル技術を使用したCO2由来の「次世代LIMEX」を発表した。およそ40人が集まるクローズドなワークショップでスピーチしたところ「世界中の方々から期待の声や高い評価をもらった」という。

「世界が自分たちのビジネスを求めていると自信が持てました。一方で、取り組みをもっと加速させないとダメだとも気づきました。1年後にダボスに戻ってくるまでハングリーに挑戦し、製品を軌道に乗せてみせます」
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瀬戸久美子=文 写真=世界経済フォーラム

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