スマホで何を見てる?
白武:赤荻さんは、マンガもお好きなんですね。赤荻:そうなんです。最近は、「Kindleインディーズマンガ」と、X (旧Twitter)ではやっている「#漫画が読めるハッシュタグ」が面白くて。マンガには毎月5000円くらい使ってしまうのですが、この2つはどちらも無料で読めるので、好きな作家さんやジャンルを探して読みあさっています。
「#漫画が読めるハッシュタグ」は作品紹介が一言にまとめられているのと、1ページ目を読めば自分が好きな作品かどうかがだいたいわかるので、無駄な時間を使わなくていいのもポイント。作品を探すときもどんどんスクロールして見つけられて楽なので、自分に合っているなと思います。
マンガのほかにも、SNSで最近面白いと思って見ているのが、ギャルが炊飯器を使った料理を紹介する「炊飯器ギャル」(@galgo_urmet)というInstagramアカウント。私はインスタで料理の投稿をよく見るのですが、なかでも「炊飯器ギャル」がつくる料理は本当に簡単でおいしい。面白くて、誰にでもまねできるのがいいんです。
真子:それ、知っています。デコレーションされた炊飯器のインパクトもすごいですよね。
赤荻:そうなんです。ギャルの爪の音も心地よくて、気づくと何回も見てしまっているんです。
「現象」を展示するという試み
真子:私が今面白いと思うのは、自分が制作にかかわっているものなのですが、「やだな一展」や「いい人すぎるよ展」といった展示です。赤荻:見たことあります。Twitter......いや、Xで。
真子:そう、まさに「やだな一展」では「Xって言うのはちょっと恥ずかしくてやだなー」とか、そういった日常に潜む“やだなー”に着目しています。一方、「いい人すぎるよ展」では、「集合写真で中腰の人」や「電話なのにお辞儀してる人」といった”いい人”を取り上げているんです。いずれも文字や写真、イラストなどで展示しています。
私は芸大出身で、電通に入社してからもずっと美術作品の展示を手がけたいと思っていたのですが、仕事でそういった機会に恵まれなくて。そのことをクリエイティブディレクターの明円卓さんに話したら、「自分たちで展示の機会をつくろう」と言ってくれて、実現しました。芸大出身といっても美術作品をつくれるタイプではないので、当初は何を展示しようか悩みました。ですが、「美術作品は日常に何かしらの新しい見方をくれるもの」と解釈したときに、日常によくある現象を取り上げて展示することで、自分の思う展覧会は再現できると思いました。
5年前に初めて「映える展」を開催してからどんどん規模を拡大し、制作メンバーも増え、今はentakuというクリエイティブチームで活動しています。23年10月に開催した「いい人すぎるよ展+やだなー展 2nd Season」は大盛況で、16日間で2万5000人を動員しました。同年11月からは「いい人すぎるよ美術館+切ないすぎるよ博物館」が全国6都市のPARCOを巡回します。
白武:テーマは違っても、「日常に新しい見方をくれる」ことを軸にしているということですね。
真子:そうです。例えば「ストローに口紅が付くのがやだなー」であれば、「それなら黒いストローをつくればいいのでは」といった、発想の転換につながるような気づきを与えられたらと思っています。