私たちは、優しさや知性、ユーモアのセンスなどに魅力を感じて誰かに恋愛感情を抱くが、知らず知らずのうちに、その人が長い目で見て自分にとって良い相手かどうかを値踏みする。一般的には、パートナーの配偶価値が高ければ高いほど、恋愛関係を維持するためにいっそう懸命に努力しなければならない。
そうした努力はたいてい、次の2種類の「配偶者維持行動」となって表れる。
1. メリットがあると思わせる行動
自分と付き合っていることで得られる「メリット」を失いたくないと相手に思わせるための行動だ。プレゼントを贈ったり、愛情を注いだりすることも、そうした行動に含まれる。2. 大きな損失だと思わせる行動
自分と別れることは「大きな損失」だと相手に思わせるための行動だ。例えば、(意識的か無意識かを問わず)自分のライバルであるほかの恋人候補を前にして、相手をからかったり笑いものにしたりするのも、そうした行動に含まれる。一見すると、この2つは根本的に異なる行動のように思える。しかし、とりわけ独占欲については、「相手を自分だけのものにしようとすること」と、自分にとって大切な存在を確信をもって「守る」ことの境界線が曖昧になってしまうようだ。
このことは、「マッチング市場」において、自分自身と相手の価値をどう評価するか、ということに大きく関係している可能性がある。となると、次のような疑問が浮かんでくる。
独占欲は認められるのか? 認められるとすれば、どう示されるべきか?
ご承知のとおり、パートナーに対する独占欲が強すぎたり、失うのが怖くて嫉妬深くなったりすると、良からぬ結末に至ることが多い。こうした行動は、前述したパートナーを維持するための2つめの行動、つまり、「大きな損失だと思わせる行動」の一種であり、ほとんどの場合は、関係に対する満足度の低下につながることが、2022年に科学雑誌『PLOS ONE』で発表された論文で明らかになっている。
10年前の研究で明らかになっているように、パートナーに対する独占欲をはっきりと示すことは、メリットがあると思わせる行動になる場合もあるが、大きな痛手になると思わせる行動にもなり得る。その違いは、自らの配偶価値とパートナーの配偶価値が適合する度合いによる。このことがひいては、関係に対する満足度をも大きく左右することになる。