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2024.01.25 09:00

先進システムSIMSを生み出した気概。DXは変革を実現する“イネーブラー”

Forbes JAPAN編集部
「温室効果ガスの削減を推進するため、燃料単価は高くなる。短期的にはコスト増になると思う。その分、燃料の効率的な使い方を追求していく。また、新しい燃料の技術開発も焦点になる」

注目している代替燃料は、アンモニアだ。発電にも利用できるため、世界で需要増が予想されている。日本郵船は2026年就航に向け世界初のアンモニア燃料で航行するアンモニア輸送船の開発を進めている。さらに、水素、メタノールなど次世代のゼロエミッション燃料に転換する技術開発も目指す。

IT人材育成制度の設計も要

郵船ロジスティクスのCIOも兼務している高橋は、貨物輸送から顧客への配送までのサプライチェーンにおけるデータマネジメントの難しさを経験してきた。「さまざまなデータを揃えて見える化をすることはかなり大変な作業になる。現在、データ基盤の整備を進めているが、これが整備されれば、経営管理やESG経営、物流、運航の効率的なオペレーション、燃料節約と様々な領域の可視化、さらにトランスフォーメーションにつながる。データマネジメントの品質向上にはさらに注力していく」と、今後の方針について語る。

高橋は2023年4月、郵船ロジスティクスから日本郵船グループのCIOとして参画。それまでは国内外の定航・物流に携わってきた。IT専門外だった自身の経験を振り返り、IT人材育成の必要性も説く。

「若手社員はIT部門、デジタル部門に積極的にかかわってほしい。同時に、デジタルで先を行く海外の知見を得るために、国際感覚も磨いたほうがいい。人事ローテーションや会社の教育制度をこの方向にデザインし直し、IT人材育成も具現化していきたい」

ITに縁がなかった時代を知るからこそ、そして現在はDXを基盤とした成長戦略の中心にいるからこそ、人材へのこだわりがあふれる。これからの日本郵船で進むDXを注視していきたい。


高橋泰之◎1987年日本郵船入社。2017年NYKコンテナ社長。18年郵船ロジスティクス執行役員。19年同CIOなどを経て、23年4月から日本郵船執行役員兼グループCIO就任。郵船ロジスティクス執行役員兼CIOを兼務。

文=中沢弘子 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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