パレスチナ支持、イスラエル支持の双方から非難を受けているのは、コロンビア大学だけではない。ハーバード大学、ペンシルベニア大学など、有名校が、毎日のように何らかの批判に晒されている。大学の執行部にとって、パレスチナとイスラエルの間のバランスをとるのは、非常に困難になってきている。パレスチナ侵攻を続けるイスラエルに対しての学内での抗議行動は表現の自由として認める一方、そのような抗議活動が反ユダヤ主義という人種差別に発展することは許さない、というのが大原則だが具体的な事例について次々に判断を下していくことはとても大変だ。大学への大口寄付者への対応も頭痛の種だ。さらに、大学では(パレスチナ人、ユダヤ人双方への)人種差別が起きていて、大学執行部はそれを放置しているのではないか、という議会からの聴聞だ。司法当局からの捜査も始まるかもしれない。
大学が対応を大きく間違えば、1968年の「大学紛争」のような事態にも発展しかねない。コロナ禍を乗り切った大学が再び大きな試練に直面している。
伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002~14年東京大学教授。近著に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy(』2nd Edition、共著)。