フジロックや米空軍も採用 米美容師発「切った髪の毛」の思わぬ用途

美容師のボランティアとヘアマット

──活用方法はさまざまありますね。
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濱:はい。いまは新潟県新潟市秋葉区の廃油田の問題にも取り組もうとしています。新津油田は、明治時代に開坑した油田で、1910年代には産油量が日本一を誇りました。1996年に採掘が終了しましたが、現在も古い油井から油が噴出したり、地面から油が染み出てきたりしているため、住民の生活に影響が出ています。

新潟市秋葉区の油噴出被害

新潟市秋葉区の油噴出被害

こうした問題の解決に向け、行政と協力してヘアマットの設置・回収方法の検討を開始しましたが、油井は600ほどあるといわれており、長期的な対策が必要です。既存のオイルマットは石油由来の製品が多いため、それをヘアマットに置き換えることで、化石燃料の使用削減にも貢献できると考えています。

ビジネス街から里山まで 法人設立で販路拡大へ 

──今後、生産体制は強化されていくのでしょうか。

舘:これまではボランティアベースで活動してきたため、安定してヘアマットを生産できず、継続的な契約を結ぶことができない状況でした。法人を立ち上げた大きな目的の一つは、活動を組織化し、安定した生産体制を構築することです。そのために、まずは運営や製造をサポートしてくれる人材を募集しています。安定生産が可能になれば、活用法は多岐にわたると考えています。
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アメリカでは、オイルタンカーなどの原油流出事故のほか、空軍の戦闘機などから出るオイルの回収にも使用されているほか、チリでは、土壌の水分を維持するための植栽カバーとして活用されています。私たちも、里山でのグリストラップやビジネス街での植栽などでの活用を模索しています。

グリストラップ:下水道に食用油や残飯などが流出することを防ぐ装置

髪の毛を活用したビジネスを行うスタートアップも出てきています。オランダのHuman material loopは、美容室から回収した髪の毛を使った衣服を開発しています。材料科学の専門家が立ちあげた同社は、髪の毛がウール(羊毛)に似た特性をもち、断熱性が高く、耐久性がある点に注目しました。すでに髪の毛100%でできたセーターのプロトタイプを完成させています。脱炭素社会の実現に向け、「髪の毛」を活用した循環型社会が動き始めています。

文=尾川真一 編集=露原直人

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