研究チームは、結晶を成長させるための種としての役割を果たす微小なドロマイト結晶を、カルシウムとマグネシウムの溶液に入れ、2時間に4000回照射される電子ビームを使って、必要な周期的条件を再現した。電子ビームが溶液を分解することで生成される酸により、結晶の不安定な部分が除去される一方で、安定した部分は残される。結晶構造中の空孔が、溶液から析出するマグネシウム原子とカルシウム原子によってすぐに埋められることで、ドロマイトを形成するのに必要な原子の列ができる。
この手法により、ドロマイトの結晶が約100ナノメートル(10円硬貨の直径の約25万分の1)成長することが確認された。これは、わずか300層のドロマイトに相当するが、これまでの実験では、ドロマイトが5層以上成長したことは一度もなかった。
自然の条件下では、成長中のドロマイト結晶にカルシウムやマグネシウムがランダムに付着し、不適切な箇所にはまり込んで欠陥ができることで、ドロマイト層のさらなる形成が妨げられる場合が多い。このような秩序の乱れがドロマイトの成長を遅らせるため、秩序が保たれたドロマイトを1層形成するのに1000万年かかることになる。
秩序が乱れた原子は、正しい位置にある原子に比べて安定性が低いので、鉱物が水にさらされると最初に溶解する。これが雨や潮の満ち引きなどで繰り返し洗い流されることで、ドロマイト層がわずか数年で形成されることが可能となる。
苦灰岩層の多くは過去の干潟で、かつて風化作用と定期的な浸水にさらされた領域であることが、この説をさらに裏付けている。地球の海洋が、現在より温暖な気候と相まって、分厚いドロマイト堆積層の形成に理想的な条件を作り出した。過去1億年の間に地球の気温が下がるのに伴い、ドロマイトは方解石などの現在広く分布する炭酸塩鉱物に取って代わられた。
この研究結果は、半導体、太陽光パネル、バッテリーなどの現代技術に広く利用されている結晶性材料を設計・製造する新たな方法の開発にもつながりうるものだ。
今回の研究をまとめた論文の責任著者で、ミシガン大材料科学工学部助教のウェンハオ・サンは「過去の結晶成長実験では、欠陥のない材料の生成を目指して、結晶を非常にゆっくりと成長させようとしていた。結晶が成長する間にこの欠陥を定期的に溶解して除去すれば、欠陥のない材料の速やかな成長が可能になることを、われわれの理論は示している」と結論付けている。
論文「Dissolution enables dolomite crystal growth near ambient conditions(溶解によるドロマイト結晶の常温常圧付近での成長)」は、学術誌Scienceに掲載された。追加資料とインタビューは、ミシガン大学より提供された。
(forbes.com 原文)