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2023.12.22 10:45

「ユニコーン100社輩出」には、失敗例を含めた可能性のシェアが必要だ

Drop of Light / Shutterstock.com

──23年の「ダボス会議」に参加したユニコーンのうち半数以上がアメリカ発のスタートアップでした。選出企業の地域的な偏りや、アメリカ発の新興企業が多く選出される理由をどうお考えですか。
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主な理由は3つある。第1に、米国は依然として世界最大の経済大国だ。世界的な大企業の割合が最も多いのは依然として米国であり、スタートアップを創出する経済力がある。

第2に、企業内ベンチャー・キャピタル(CVC)の存在も含め、アメリカには資金調達や起業を容易にするさまざまな仕組みが存在し、スタートアップ誘致の大きな力になっている。実際、多くの企業や起業家がアメリカに移転するのは、こうした環境が非常に魅力的だからだ。AIガバナンス・サミットでサンフランシスコに行った際にも、私が会ったリーダーたちの約半数はレバノンやインド、イギリスなど他国から来た起業家だった。

第3の理由はエコシステムの存在だろう。アメリカには特殊なスタートアップ・エコシステムがある。シリコンバレーが有名だが、今ではオースティンやボストンなどにも新たなエコシステムが生まれている。ニューヨークにはバイオテクノロジーやフィンテックなどに強いスタートアップが揃うし、マイアミには暗号資産やNFTなどに照準を当てたスタートアップが集積している。サブ・エコシステム(副次的な生態系)が広がりを見せているのもアメリカの特徴だ。
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──日本の岸田政権は「スタートアップ育成5か年計画」のなかで、将来的にユニコーンを100社輩出することを目標のひとつに掲げています。日本から多くのユニコーンを輩出するには何が必要だと思いますか。

成功例や失敗例を含め、新たな可能性を提示している起業家たちにもっと注目が集まるべきだと思う。

例えば、今年の4月に日本の航空宇宙企業アイスペースが着陸船の打ち上げに失敗したとき、「次に向けた大きな一歩だ」と話した袴田武史CEOのリーダーシップには感銘を受けた。彼は長期的な目標に視点を置き、体当たりの精神を持ち続け、ひたすら努力を続ける人だ。彼のようなロールモデルがもっと必要だろう。

皆がやっていることを研究してノーベル賞を受賞した人はいない、という言葉がある。起業家はいわばビジネス・エコシステムにおけるノーベル賞受賞者であり、大企業と同じことをしているだけでは注目に値する起業家にはなれない。新境地を開拓しなければならないのだ。誰もが成功するわけではないが、彼らに注目すればするほど、既存のビジネス・リーダーや学生たちがその可能性を見出すようになるだろう。

取材・文/瀬戸久美子 写真/世界経済フォーラム

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