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2024.01.02 14:00

右へならえには従わない。EVはマツダの意志でいく

Forbes JAPAN編集部
マツダが誇る技術資産には当然、ロータリーエンジンも含まれる。11年ぶりに復活したロータリーエンジンを発電機として搭載した「MX-30 Rotary-EV」は大きな注目を集めた。

「スポーツカーの開発副主査をやっていた時、RX-7の最終型を担当しました。それもあってロータリーエンジンには思い入れがあります。応援していただけると、うちのエンジニアは張り切りますよ」

スポーツカーやエンジン、走りの話になると、スマートな語り口がほのかな熱気を帯びる。自身もサーキットでハンドルを握りレースを楽しむ。要は根っからのクルマ好き。さらには豊かな国際感覚が毛籠の強みだ。

大学で国際政治学を学び、1996年にはフォード傘下の体制で上司となった当時の社長マーク・フィールズにグローバルな視野をひらかれた。そして2004年に欧州に赴任。

「ヨーロッパでの私のチームは13カ国の人々から成り立っており、はじめは意見がまとまらなくて苦労しました。そのうち“違い”ではなく、ともにマツダを創るという“共通項”に話を集約するようなマネジメントを心がけた。すると、みんながものすごく力を発揮してくれるんです。これが多様性の価値なんだと気がつきました」

16年、米国に移っても欧州での学びは生かされる。BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動で現地従業員からの突き上げに正面から向き合った。そして、現地販売店の大整理と意識改革を進め売り上げを飛躍させた。営業とマーケティング畑で培われた毛籠のもうひとつの強みだった。この結果が社長就任への大きな布石となった。

グローバルな潮流のなかで個々のアイデンティティまで配慮できる毛籠は、今、あらためて顧客とブランドの接点を磨こうとしている。「私はお客さまをすべての起点に置いて考えたい。お客さま個々の声に耳を傾け、絆を深めたい。そのためにはブランド体験がいちばん大事だと考えています」

すでに11月1日付けで「ブランド体験推進本部」が新設されている。「ただクルマをつくって売るだけではなく、楽しむ機会もどんどん用意していきたい。『クルマは楽しいよね』『いいクルマは人生を豊かにしてくれるよね』。その声をひとりでも増やしていきたいと考えています」

クルマと人の関係をいちばんに考える毛籠の次の一手が楽しみだ。


もろ・まさひろ◎1960年、京都府出身。京都産業大学法学部を卒業後、マツダ入社。2002年より海外を主戦場としてマーケティング、販売で実績を積み上げる。19年、北米事業統括として北米市場拡大に寄与。23年6月より現職。

文=前川仁之 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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