エコシステム

2023.12.21 10:05

海外新興1800社を集約 日本企業の競争力を取り戻す「FoF」構想

CFOの髙島史(左)とCEOの中村貴樹(撮影=林孝典)

高島もJAFCO時代に次のような話を頻繁に耳にしたという。
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「LPの大企業の方々が、口を揃えて『このままじゃ日本企業は海外から置いていかれる』と言うんです。その打開策の1つとして、皆さんスタートアップへの投資やCVCをつくるのですが、なかなか簡単に実績は上がらなかった」
 
 
課題意識を共有した2人は「日本企業をもう一度元気にする」を合言葉に、創業を決意。約1000に上る海外VCをリストアップし、約1年をかけて日本企業と組むのに最適なVCを探して交渉を進めた。
 
VCの選定基準には次の3つを設定した。
 
1つ目は、10年から20年のファンド運営実績があること。ファンドは1号、2号と増えていくが、長期間運用ができていれば投資の選球眼が良いと判断した。
 
2つ目は、シリーズBからDのスタートアップに投資していること。創業まもないシードステージの会社の場合、日本の大企業の細かなデューデリジェンス(事業調査)に対応できるだけの人員体制が揃っていなかったり、実績がないために協業がうまくいきにくいという。
 
3つ目は、スタートアップの事業開発支援に積極的であること。VCによって投資のみに注力するケースや、システム構築を含めた社内体制を支援するケースなどさまざまだ。ただ、繰り返しになるが、Cross Capitalでは協業創出に目的を置くため、投資先の事業開発支援体制が充実しているかどうかを判断材料とした。

欧州、イスラエルVCが意欲

結果的にCross Capitalが組むことを決めたVCは10社で、その投資先は計1800社にのぼる。中村が「ジャパンブランドの賞味期限はもう少なくなってきている」という危機感を抱きながらも、実際には日本のエンタープライズ市場へ興味を持つスタートアップは数多くあったという。
 
「日本で消費者向けのサービスを展開するのはとても難しい。まず日本語のハードルがあり、安い金額でも高い質のサービス提供が求められます。一方で企業向けのサービス市場は、ソニーや日立のような数兆円の売り上げを持つ大企業が健在です。そういった企業とともにサービスを提供したり、パートナーになって世界展開をしたりしていきたいというニーズがあるんです」(中村)
 
 
ただ、すべてのVCが前向きではなかった。とりわけ米国や中国、インドでは「母国マーケットが巨大なために日本には興味が低く、半数以上は話すらも聞いてもらえなかった」という。
 
反対に、欧州やイスラエル、東南アジアのスタートアップは海外に進出することで事業を拡大していく必要があるため、VCも前のめりだった。
 
LPとVCが揃い、いよいよ2024年1月からは協業が始まる。Cross Capitalが話を進めてきたLP候補のなかには様子見の企業や、「英語人材がいないから」「協業ができるエース級のメンバーを出す余力はない」といった理由で参画を諦める企業もあった。
 
協業の成功事例が今後明らかになれば、むしろCross Capitalを通じて人材を育成しようという企業も現れてくるだろう。「日本企業をもう一度元気に」という中村たちのビジョンに向けて、まずは滑り出しが重要となる。

文=露原直人 撮影=林孝典

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