ヘルスケア

2023.12.23 13:00

「砂糖は敵」は間違い? 心理学者からのアドバイス

遠藤宗生

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私たちが甘いもの好きであるのには進化的理由がある。人間の味覚は、甘みをエネルギー源を示すものとして好むように進化してきており、私たちの食習慣と文化的習慣の中で、適量の砂糖が重要な位置を占めてきたことを示している。

しかし今、砂糖の入った食べ物は容易に入手できる上、感情に訴える魅力を持っている。それには広告が大きな役割を果たしている。グラスの氷に注がれるおいしそうなソフトドリンクの写真や、チョコレートバーの包装がスローモーションではがされ、そのクリーミーな食感を強調する映像の抗しがたい誘惑を思い浮かべてほしい。「健康的」とうたわれる栄養ドリンクや朝食用シリアルの多くにも、大量の砂糖が含まれている。ファストフード店は戦略的に食事と加糖飲料をセットで販売し、コンビニエンスストアはレジ横に魅惑的なチョコレートバーを陳列する。

その結果、砂糖の多い食べ物の選択はほぼ反射的になり、砂糖の摂取量を制限することは、平均的人間にとって重大な課題になっていいる。また、砂糖無添加という選択肢が、「罪悪感のない」ものとして宣伝されることで、話はますます一方的になり、多くの人々に「砂糖は不健康」という恐怖を植え付けている。以下に、糖分の多い食物との付き合い方を見直し、あなたの食習慣における主導権を取り戻す方法を2つ紹介する。

1. 「やけ食い」は気分よりも習慣が要因に

私たちの脳は、嬉しい見返りを生み出す行動を繰り返すようプログラムされており、主としてそれはドーパミンの分泌と結びついている。ドーパミンは、ある行動が楽しいものであり、繰り返されるべきだということを脳に伝える神経伝達物質だ。学術誌Neuroscience and Biobehavioral Reviewsに掲載された2019年の論文では、砂糖のとりすぎが、ドーパミンに対する脳の反応を長期的に変えることが指摘された。砂糖の摂取は一定以上繰り返されると、やめるのが困難な癖になってしまう。

ストレス解消のために食べる「やけ食い」は、特にその対象が砂糖の入った食べ物の場合、そうして根付いた習慣と、脳が学習した即時的報酬の期待によるものであることが多い。この基本的なフィードバックループは、覚醒剤ほど脳に与える影響が大きくはないものの、それとよく似ており、砂糖には依存性があると言われるのはそれが理由だ。
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翻訳=高橋信夫

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