国内

2023.12.26 11:00

若き起業家はシリコンバレーでなくASEANを目指す

Forbes JAPAN編集部
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日本を勝たせる覚悟、世界を獲るビジョン

「ベトナムに今、住めていないという気持ちです」というのが、FinT大槻祐依(28歳)の本音だ。Z世代中心の組織でメルカリ、KDDIなど大手企業へのSNSマーケティング支援の国内事業で、堅実に成長してきた同社は、ベトナムへと進出している。

立ち上げに送り込んだ日本人1名以外は、現地ベトナム人メンバーだ。TikTokを運営するByteDanceベトナム法人から転職してきた24歳のマーケターも活躍中。英語堪能な現地のエリート人材が集い始めているという。

「FinTは、世界で日本企業を勝たせる会社になります。短期でみれば、関西支社を立ち上げた方が売上はあがりますが、『グローバル企業になる』という明確な意志を持って、ベトナム進出を決めました。まずはASEANで、日系メーカーの価値ある商品を、Z世代のセンスと、SNSの力で届けていきます」(大槻)
ベトナムでの日系メーカーは、商社による販路はあるが、SNS時代に入り、従来のマス広告が効かず、マーケティングで劣勢にある。ベトナムの平均年齢33.3歳。経済成長と共に嗜好は大きく変化している。人気商品を持ち、国内トップシェアを誇る企業でさえも、苦戦を強いられているという。そうした日系メーカーがFinTベトナムと連携し、SNSの力で巻き返しを図っていく。

「国を問わず、SNSは共通のアルゴリズムで、Z世代は共通の価値観を持っています。過去の恩恵を受けて育った私たちの世代で、日本を衰退させないために。ASEAN中のZ世代と手を取り合い、世界で日本を勝たせていきます」(大槻)

日本のお家芸「交通インフラ技術」で、ASEANを攻める起業家もいる。都市型自走型ロープウェイ「Zippar」を開発するZip Infrastructureは23年、マレーシア科学大学とMOU(基本合意書)を2023年に締結した。マレーシアで社会問題化する交通渋滞。同国では店舗に独自の駐車場がなく、路上・路肩駐車が一般的だ。特に首都クアラルンプールでの渋滞問題には、行政も頭を抱える。朝夕のラッシュ時の路肩駐車禁止など、中長期での対策を打ち出してはいるが、抜本的な解決策は未だにない。
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文=フォーブス ジャパン編集部 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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