ティールらは政府との取引に失敗
しかし、2023年にこのプロジェクトのプロモーションビデオがフェイスブックで広く拡散された後、ブータン政府はフィンチやティールたちから距離を置いた。ブータンの政府首脳は4月の声明で、「これらの資料はパートナーシップの存在を偽って描いている」と主張し、政府はユンドゥン社を支持しておらず、正式な関係も持たないと述べた。一方、ブータン政府は以前から秘密裏にこの計画を進めており、ワンチュク国王はスマートシティのアイデアを投資家に売り込んでいた。現地メディアの報道によると、4月に国王はインドのニューデリーを訪れ、ドラウパディ・ムルム大統領やナレンドラ・モディ首相と会談し、ゲレフの経済特区の創設と、長らく停滞していた両国間の鉄道プロジェクトについて話し合ったとされる。
ユンドゥン社の投資家が王室のプロジェクトから締め出された後に、誰がこのプロジェクトの出資元になるのかは不明だ。しかし、世界の複数の富豪がこのプロジェクトに興味を示している。11月のニューデリー訪問の際に、国王はインドのアダニ・グループの創業者で会長のゴータム・アダニと会談した。アダニはインスタグラムで会談の写真を公開したが、フォーブスのコメント要請には応じなかった。
国王の個人的なネットワークを知る複数の情報筋によると、米国のベンチャーキャピタリストのティム・ドレイパーもこの会話に加わっており、彼のテックインキュベーターであるドレイパー・スタートアップ・ハウスは以前、ブータンの起業家育成プログラムに関わったことがあるという。ドレイパーはブータン政府との関係についての質問に答えなかった。
イタリアのメディチ家の末裔を自称するロレンツォ・デ・メディチ王子も出資元の候補の1人で、フォーブスの取材に対し、ブータンの王室と親しく、投資機会について助言したと語っている。しかし、メディチ王子は「メガシティへの出資の件は、まだ打診されていない」と述べた。
ゲレフのスマートシティ構想は、ブータンがより確かな未来を手に入れるための最新の賭けのひとつと言える。ブータンは経済を近代化し、国外に働き先を求める若者たちの流出を食い止めようとしている。この努力の一環として、王国は暗号資産のマイニングにも注力している。フォーブスは以前の記事で、ブータンがシンガポールのビットコインマイニング大手Bitdeer(ビットディア)と提携したことを報じていた。
(forbes.com 原文)