南アフリカ版「エル・デコ」の編集長も務めた経験があるカレン・ルース氏。ホテルのインテリアはルース氏が手がけ、夫のコーズ・ベッカー氏が庭やファームにきめ細かく目配りしているという。
ベッカー氏は南アフリカのメディア会社ナスパーズなどを持ち、フォーブスの長者番付にも登場する実業家。その一方、プライベートではガーデニングの愛好家としても知られている。そんな二人の妥協なき美意識が詰まったのが、この「ザ・ニュート」というわけだ。
広さ約405ヘクタール(東京ドーム87個分!)もの広大な敷地には、フランス風・日本風などの数々の庭園やリンゴ園、シードルの醸造施設、3つのレストラン、スパ、美術館などがあり、最低宿泊数の2泊3日では全部を回ることはできないほど。部屋数はわずか40室、ヨーロッパの貴族が暮らした郊外のマナーハウスのような、クオリティ感あふれる農園暮らしが楽しめる。
ちなみに「イモリ」を意味する名前は、ここで独自品種のヤモリが見つかったことに由来する。この土地の豊かな生物多様性を守る場所でありたい、という2人の思いが込められている。
この土地を愛するがこその、「この土地らしさ」あふれる個性を、さらに2人の感性で洗練させたのが「ザ・ニュート」。そこに込められた3つの「この土地らしさ」とは。
特産のリンゴを生かしたシードル造り
ザ・ニュートがあるのは、イギリス南西部。ロンドンから電車で西へ2時間弱のキャッスル・キャリー駅から車で10分ほどの場所。この辺りは「サマセット」と呼ばれ、リンゴの名産地だ。
敷地内のさまざまな場所にはリンゴのオブジェが飾られ、70種3000本の木が植えられたリンゴ園やシードル醸造所などがあり、まるでリンゴのテーマパークのような楽しみ方もできる。園内のリンゴはまだ若木のため、シードルの材料は100%園内で生産されたものではないが、ゆくゆくは100%ここのリンゴで、と考えているそうだ。
この土地への愛は、この土地で循環するサステナブルなシードルづくりに見てとれる。シードルを作る際に出た搾りかすは敷地内のベーカリーのサワードゥのパンの酵母作りに活用されるほか、家族が農業を行っている地元採用のスタッフが持ち帰り、動物の餌や畑の堆肥などにしている。