アジア

2023.12.29 16:00

「幸せの国」ブータン、経済の起死回生策は「ビットコイン採掘」

ブータン政府の「起死回生」を担うビットコイン

ビットコインは、ブータン経済の起死回生のプランとして追加された。ブータンの財政は長い間、観光収入と隣国インドへの水力発電による電力輸出によって支えられてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症の爆発的流行によって、1人1泊あたり65ドル(約9200円)の観光税から得られる年間8860万ドル(約125億円)の収入は激減し、早急な軌道修正が必要となった。複数の情報筋によると、ブータン政府は2020年頃からビットコインの採掘業者や関係者と協議を始めた模様だ。

ブータンのデジタル資産事業を監督するDHIは、ビットコインの価格が5000ドルだった時期(2019年4月にこの水準だったが、現在は3万6000ドル)に、「マイニング事業に参入した」と地元紙The Bhutaneseに語った。5月にフォーブスが、その時期の確認を求めたところ、同ファンドの広報担当者は一連のビットコイン投資が「2019年のある時期に行われた」とだけ答えた。さらに、「DHIのデジタル資産に対する投資のリターンは現在、累計でプラスになっている」と付け加えた。

ブータンを代表する航空会社や水力発電所、チーズ工場も運営するDHIは、ビットコインのプロジェクトの資金を調達するために外貨建て債券を増発したことを開示しているが、年次決算ではビットコインマイニングの収益や投資の内訳を一切明らかにしていない。ブータンの財務省も同様に沈黙を守っている。

シンガポールの大手との提携

しかし、フォーブスが確認した4つの国有のマイニング施設は、同国最大のものではないかもしれない。2022年にブータン政府は、シンガポールのマイニング大手でナスダックに上場するBitdeer(ビットディア)と提携した。衛星画像によると、ビットディアは3月に南部の町ゲドゥでマイニング施設を着工したが、8月には100メガワット(MW)をオンライン化したと述べていた。この施設には、ブータンの国営電力会社を所有するDHIが電力を供給する。

また、ビットディアは7月に、すでに1万1000台の採掘マシンを稼動させており、さらに1万5000台を追加で発注したことを明らかにした。Nikkei Asiaは6月の記事で、この600MWの施設は、国内で最も多くの電力を消費することになると報じていた。

ビットディアの社員はここ最近、「Mining Disrupt」などの業界会議で、5億ドル(約700億円)の「グリーン・クリプト・マイニング」ファンドへの投資を呼びかけている。DHIは、このファンドがブータンで300から400の雇用と新たなコンピューティング部門をサポートすることになると見込んでいる。ビットディアのマット・リンホイ・コングCEOはフォーブスに宛てた声明で、このファンドには「多くの関心が寄せられている」と述べ、名前は伏せたが複数の投資家と交渉中だと語った。

アジア開発銀行は、ブータン経済の成長率が今年4.6%まで減速すると予測しており、これらの投資と雇用はブータン政府にとって非常に重要だ。ブータン政府のエコノミストは、財政危機を回避するために経済改革と予算の削減を要求している。

しかし、今のところ、ブロックチェーン関連の事業に対するブータンの意欲は衰えていないようだ。10月の国王と王妃の結婚12周年の記念日に、ブータン政府は実験的な分散型デジタルIDアプリを発表した。その最初のテストユーザーとなったブータン初のデジタル市民は、同国の皇太子である。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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