説明不能
天体物理学者らは今、アマテラス粒子がどこからやって来たかと、粒子の正体が何かを説明しなければならない状況に置かれている。「宇宙線が飛来した方向に合致する有力候補の天体は特定されていない。これは、未知の天体現象や、標準理論を超えた新規の物理的起源の可能性を示唆している」と藤井准教授は述べている。欧州原子核研究機構(CERN)によると、標準理論は、4種類の基本的な力に支配される、物質の基本構成要素がどのように相互作用するかを説明している。CERNは、世界で最大規模で最も出力が高い粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」を備えている。だが宇宙線は、地球上で作り出せるどんな高エネルギー粒子よりも100万倍高いエネルギーを持っているという。
論文の共同執筆者で、ユタ大教授のジョン・ベルツは「これらの宇宙線は、空のまったく異なる場所からやって来ているように思われる。謎の発生源は1つではないようだ」と指摘する。「それは、時空構造の欠陥である宇宙ひもの衝突かもしれない。これはつまり、人々が考え出している奇抜なアイデアを思いつきで挙げてみているだけだ。従来の方法による説明はできないのだから」
「オーマイゴッド」粒子
観測史上最高エネルギーの粒子が検出されたのは、史上2番目のアマテラス粒子検出に先立つ32年前のことだ。ユタ大学のフライズ・アイ(蝿の目)実験で検出され「オーマイゴッド」と命名されたこの粒子は、宇宙線として理論的に可能な値を超えるエネルギーを持っていた。銀河系内にはこの粒子を生成できるエネルギーを持つ天体は存在しないため、天体物理学者らは当惑した。それ以後数十年間で、超高エネルギーの宇宙線が30個検出されているが、オーマイゴッドのエネルギーに迫ったのはアマテラスが初めてだ。オーマイゴッドのエネルギーは推定320エクサ電子ボルト(3.20×10の20乗eV)だった一方、アマテラスは244エクサ電子ボルト(2.44×10の20乗eV)だった。
科学者らは今後、より多くの超高エネルギー宇宙線を捕捉できるかどうかを確かめるために、ユタのテレスコープアレイ(TA)の性能を向上させる予定だ。
(forbes.com 原文)