2023.11.26 20:44

スバル初のEV「ソルテラ」は、パワーで負けてもスバリストを魅了する

坂元 耕二

パワートレインは前後に2基のモーターを搭載した2モーター4WDで、日産アリア、VW ID.4、ヒョンデ・アイオニック5などのツインモーター仕様と競合している。ただし、他社のツインモーター仕様はソルテラよりパワフルだけどね。最高出力は109PS、最大トルクは169Nmを発生する。「ソルテラET-HS」の交流電力量消費率は148Wh/kmであり、航続距離は487kmと公称されている(WLTCモード)。つまり、リアルワールドでは400kmぐらいだろう。また、アリアや欧州のSUVと比べて、6.9秒の0−100km/hという加速タイムはそれほど早くないけど、高速道での合流などには十分な加速性を持っている。

ステアリングの重さはちょうど良く、路面からのフィードバックは適度だ。実は、ソルテラのコーナリング性能は、今までのWRXなどとはそれほど変わらない。と言うのは、WRXの水平対向エンジンや、ソルテラのEVパワートレーンは、両方とも低重心なのでボディロールはかなり抑えられている。



そして、やはりスバルはトヨタと比べて、スポーツの走りに振ったセッティングなので、ソルテラの乗り心地はbZ4Xより多少固いけど、安定性は良い。両車の最高性能は同じながら、スバルにはアクセルのレスポンスがよりシャープなスポーツモードがあり、その下にノーマルとエコがある。

bZ4Xにはノーマルとエコがあるだけだけど、そのノーマルでアクセルを踏み込めば、スバルのスポーツモードと同じくらいパワフルだ。つまり、パワートレイン・モードがいかに無意味なことが多いかを示している。これはガソリン車でも同じだ。いっぽうスバルには回生パドルがあるが、トヨタにはない。性能の数値はそれほど優れない。だから、インプレッサWRXやフォレスターSTIの時代に戻ることは期待しないで欲しい。

ただし、ソルテラには、ほとんどの電気自動車のライバルに欠けているドライブへの気迫がある。伝統的なスバルユーザーなら、電気がよく似合うかもしれない。4WDと低重心により、フラット4スバルの走りに近い不気味さがある。泥濘地での走破性も抜群だ。見た目は少々キザだが、これまでのスバルの多くもそうだった。

このソルテラを購入する人は、やはりスバルというブランドとその独特な走り味が好きで、その信頼性を評価するのだと思う。また、スバル独自の低重心。これは、やはりWRXから通じているので、そのコーナリング性能が気に入るだろう。

僕は1週間乗ったけど、電欠の恐れを感じなかったし、走りはとても快適だったし、不自由は感じなかったので、スバル好きにはおすすめできる。少しは補助金が効くものの、700万円という価格は決して安くないけどね。



(スバル『ソルテラET-HS』の主な諸元)
全長:4690mm/全幅:1860mm/全高:1650mm/W.B.:2850mm/車両重量:2030kg(未option時)/定員5名
定格出力:59kW/最大トルク(ネット):フロントとリアともに169N・m/0-4535rpm/駆動:AWD
タイヤサイズ:205 / 55 R16 91V


国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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