まず、テクノロジーの力によるカスタマーサクセスの向上は、AIとの融合から新たなステージが始まったところである。例えばコンタクトセンターでは常に、顧客と担当とのマッチングの精度、そしてそこで提供される情報の品質が課題でも、技術的な限界からどうしても運や、従業員個人の経験や能力に依存してきた。しかしAIの支援が入った瞬間、その状況は一変した。まず受付時に顧客ニーズから適切な担当とのマッチングが瞬時に行われ、その後の対応でも顧客特性やニーズにあわせて提供すべき情報がリアルタイムで最適化できるのである。これにより、コンタクトセンターのCXのベースラインは大幅に上がったのである。クラウドの拡充やテクノロジーの進歩で、CXツールから他の営業支援ツールや社内のデータベースへのシームレスなアクセスがより容易になっている。
また、ツールの操作性があがるほど従業員はより顧客の対応に専念でき、共感性も生まれやすいのではないだろうか。このようにテクノロジーの力は直接、間接的にカスタマーサクセスにポジティブに働いてゆくと考える。
──日本という市場についての客観的評価と、可能性について
日本は今後もCX市場、また弊社にとっても「大きく、また成長の余地のある重要な市場」である。そのため弊社は今後も継続して日本に注力し、大阪にも新たにリージョンを設け、顧客企業の要望へ丁寧に答えてゆきたいと考えている。確かに日本の商慣習は諸外国と比べると、トップダウンではないため、意思決定が遅い、マーケットもITに弱い高齢者が多いなどの特徴はあるが、すでに政府からビジネスの現場にいたるまでDXの重要性のコンセンサスが形成された。そして若年層はすでにDXやAIにも順応している。つまり新しいAI時代へ変化の機運は十分高まっている。さらにすでに世界ではAIベースのCXツールの導入が本格化してそのうねりも届き始めている。これらの要素を鑑みて日本は今後中小企業を含め、市場が一気に変化するフェーズへの過渡期に入ったと考えている。
わかりやすく言えば、日本でもこれからの数年でAIを導入、活かせる企業のみ生き残れる可能性が高いということである。
なお、弊社は日本市場そして企業の未来を楽観視している。なぜならばCXツールやEXの充実から生まれる「共感生」とは、日本文化と親和性が高く導入や活用がしやすいと考えているからである。これは日本の人々は世界的に接客を共感を持って行う「おもてなし」の文化があり、その素養をもつ人材が豊富なことによる。もし日本企業の経営層がクラウドベースでAI支援のCXツールを導入した上で、コンタクトセンターの従業員の環境改善に正面から取り組むなら、日本のCXやカスタマーサクセスは容易に次のステージへあがるのではないだろうか。
──5年、10年先のカスタマーサクセスの展望
古来、最高のカスタマーサクセスを提供する企業は最も満足した従業員で構成され、彼らがアンバサダーとなってきたとされている。つまり近い将来のカスタマーサクセスも、まずEXが高い状態で、従業員が顧客への共感性を発揮しながら対応する時に生まれることに変わりはないと考える。
忘れてはならないのは、顧客が求めるカスタマーサクセスへつながる共感性ある対応とは、EXの充実度に正比例すると考えられていること。そしてクラウドベースのシステムやAI支援はそのために不可欠な存在となること。これからの5年、10年先のカスタマーサクセスとはこのような環境の中で提供されると弊社は予想している。