きっかけは「もったいない」だった。個々の営業力が組織の力になっていない。伝統と実績ある大手企業のソリューションベースの営業改革。始まりは営業メンバーとの約2年をかけた徹底した議論だった。
「先手を打って勝ち続ける営業組織へ」をテーマに、プロダクトベースからソリューションベースの営業に変革を進めるパナソニック コネクト。市場環境の変化に迅速に対応できる体制をどう築くか。営業現場で課題を洗い出し、目指す姿と改革プランづくりに約2年をかけた。全体の営業スキル底上げのために最適なツールを導入し活用することで、直販・法人営業部門において成果を上げている。
パナソニック コネクトは、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野向け機器・ソフトウェア開発や製造、販売等を展開、傘下の現場ソリューションカンパニーに国内営業職約1100人が所属する。2018年、直販・法人営業部門で改革はスタートした。指揮を執るエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントの山中雅恵は、これまで日本IBMで法人営業の実績を上げ日本マイクロソフト等の役員も経験。山中がパナソニックの営業に抱いた第一印象は、「もったいない」だった。
「お客様を思い提案する力はあるけれど、『武器』がない。顧客データベースが不十分で、顧客への営業内容を共有する仕掛けがない。個々の営業の強さがインフラでサポートされていないのがもったいないなと」。だが、すぐにトップダウンで営業改革を進めることはしなかった。営業メンバー自らが真に必要だと腹落ちしない限り、改革が実現しないことは経験からわかっていた。営業部門の部長らをコアメンバーに、時に山中ら経営幹部も加わり「現場」が議論する時間をつくった。
営業部門で目指す3つの姿
「そこで出てきたのは、いかに先手で営業を仕掛けられるか。それを実践している営業マンのノウハウを共有し、高位平準化を図りたいという声でした」と、当時の直販・法人営業部門本部長の清水正樹は話す。(1)常に活動が見える化され営業メンバーが自律して行動できる、(2)ツール内に蓄積された情報が最大限活用され、マネジメントも現場も生産性が向上する、(3)キーパーソンカバレッジ(カバー率)などチーム戦でビジネスをスケールさせる。この3つを「営業部門の目指す姿」に掲げ、その実現に向けてセールスフォースのSFA等営業支援ツールを導入。顧客情報を一元管理し、顧客ごとに案件の進捗や営業活動履歴、売り上げ予測や実績などをまとめ、経営層から担当者までがそれら情報を把握できるようにした。