本記事の筆者である夏目萌自身は、ヘルスケアスタートアップのリンケージ取締役COO/CSOを務めるなか、出産と職場復帰を経験した1人である。
今回は、ヘルスケアスタートアップの経営陣の立場でありながら、1人の女性として産休で感じたこと、離脱と復帰にあたって必要だと感じた心構えなどについて語っていく。
子どもを授かりたい意思をオープンに
「仕事と育児の両立は難しそう」。私はそう考えて仕事を優先してきた人間でした。当時の私は常に目の前の仕事に精一杯で、仕事の量が成果につながるような時期。自分のスキルアップにも一生懸命で、仕事と育児を両立するイメージが湧きませんでした。ただ、30代になりリンケージへ経営陣として入社してからは、仕事の“量”ではなく“結果”が、より問われるようになりました。加えて、周りに子育てする人が増えたり、女性の健康に関するサービスの責任者になったりし、出産や育児を意識するようになりました。
そして1年ほどの妊活を経て子を授かり、2023年1月から産休を取得。2月に無事出産し、最近職場に復帰しました。
出産を意識しはじめたとき、私が抱いたのは、やはり産休・育休を取得して第一線から離れることへの不安です。社会人になってから、仕事をしないで2週間も過ごしたこともないような、仕事が好きな人間です。加えて、会社の成長を第一に考えたときに、どのように仕事の質を下げずにメンバーに業務を移管するか、また移管できた場合、復帰後にどこで自身の価値を発揮するのかを考える必要がありました。そのようなことを考えるなかで、意識してきたことが3つあります。
一つ目は、計画をオープンにすることです。私は子どもを授かりたいと考え始めた時から経営陣や主要メンバーにその意思を伝えていました。実際に子どもを授かるかどうかはわかりませんし、妊娠しても初期段階では流産の可能性も一定あります。私に限らず、思い通りに行かなかったとき、悲しい気持ちをいだいて周囲に気を遣わせるのではないか、どのタイミングで社内に伝えるべきか、悩む方が多いと思います。
自身の場合は、仕事柄周囲に知識がある人が多く、例えば妊娠初期での流産の確率などを互いに知っているため、気を遣わずに共有できました。そのように、健康や出産に関するリテラシーを皆で高めることができると、早めに相談しやすく、会社としても前々から離脱や復帰時の体制を検討しやすいと考えています。
ただ、それは簡単なことではありません。出産や育児をオープンに語りづらい職場にいる場合は、まずは身近な上司に1on1などクローズドな場で話してみることをおすすめします。
普段は会社で家庭のことを口にしなくても実は育児熱心であったり、自ら聞くことは遠慮しているものの相談してほしいと思っている管理職も多くいます。まずは自分から「いつか子どもが欲しい」と意志表示をすることで、上司の理解とキャリア支援につながりますし、逆に理解を示されない場合その職場にい続けるべきかを見極めるきっかけにもなります。