キャリア

2023.07.28 18:45

出産後2カ月で職場復帰 女性CxOが周囲の助けを得るために実践したこと

maruco / Shutterstock.com

育児は「協力してもらう」のではない

産休と復帰の両立にあたって意識した2点目は、夫を巻き込み対等に育児ができる環境を整えることです。今年2月、母子ともに無事に出産を終え、幸運にも4月から保育園に入れたため、そこから職場に復帰しました。無事とはいえ出産時に出血が多く、産後しばらくは貧血がひどく、安静に過ごして体調回復に努めました。この期間、特に夫が育児を率先的に行ってくれたことで、睡眠をまとめて取ることができ、体調回復が早く無事復帰することができました。
 
幸いにも対等な育児ができており、保育園の送り迎えは分担し、夜間のミルク・オムツ交換・夜泣き対応もシフト制。私が早朝に起き、時間の融通が効く夫が、早朝から昼前まで寝るという形で分担しています。育児ではよく夫が妻に対して「協力」するという言葉が使われますが、私の夫は、「女性はただでさえ出産で大事故に遭ったようなものなのだから、むしろ男性が主体となって育児をするべき」と言います。
 
復帰後の仕事との両立にあたってもとても助かっていて、どちらがワンオペになっても全く問題が発生しません。子どもが風邪で保育園に預けられない時も、互いに仕事の時間を調整しあったり、夫が病院に子どもを連れて行っても、いつどのような保育をしているか詳細に伝えることができます。
 
仕事と家庭いずれにもコミットしたい方は、出産やさらにいうと妊娠の前に、パートナーと価値観のすり合わせを行うことをおすすめします。

シェアハウスでの子育てで、周りを頼る

意識していたことの3つ目は、周りを頼ることです。これまでメンタルヘルスに関わる仕事をするなかで、産後うつは「育児は自分がやらないといけないこと」という責任感が原因になることがあると知っていました。そこで夫婦で話し合い、当初から周りを頼って持続可能な体制をつくる方針にしました。
 
実は私は夫と9年前からシェアハウスで暮らしています。友人と8人で住んでおり、インド人のデザイナーの女性や、外資IT企業に勤める男性など、グローバルで新しい価値観を楽しむ人で構成されています。結婚する前からシェアハウスに住んでいますが、子育てにおいて、ちょっとした時に子どもを見てもらえる環境がとても助かっています。
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例えば生後1週間経った頃からシェアメイトにもミルクをあげてもらったり、料理中に子どもを見守ってもらったりしています。たくさんの方に見守られながら、刺激をもらいながら人見知りなく元気に育つといいなと思っています。

他にも、区の制度でベビーシッターの補助を受けたり、病児保育のサービスを利用したり、制度やサービスをフル活用しています。
 
このように、私が短期間で現場に戻ることができたのは、当初から周囲を頼ると決めて、精神的にも持続可能な状態を作ることができた点が大きいと思っています。
 
産休は、個人にも組織にも良い機会になりました。個人としては育児を軸にした新たなユーザー視点を持つ機会が増えたり、リンケージの経営や事業について良い意味で客観的に捉えられたりしました。病院や地域、保育園での新たな出会いなどを通して、ビジネスだけの世界からより広い世界と繋がり、開放的な環境に身を置いている感覚を得たり、育児を取り巻く社会の不便さに気付くきっかけになったりしました。
 
組織としては、私の産休により業務移管が進み、経営や事業上の意思決定により集中できるようになりました。時間的な制約による難しさは感じますが、だからこそ業務の本質に集中する意識も高まっています。
 
もちろん、これは私の一つの経験談でしかありません。私の場合は、精神的には仕事と育児の両方に全力を注ぎつつも、物理的には周囲を頼る形で両立を試みましたが、自身が何を大事にしたいのかによって仕事と育児の両立の方法は変わってくるのでしょう。

文=夏目萌 編集=露原直人

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