インドネシアで最も裕福な人物に急浮上した「地熱発電の富豪」

Prajogo Pangestu(C)Barito Pacific

インドネシアのエネルギー分野の富豪、プラジョゴ・パンゲストゥ(Prajogo Pangestu)の保有資産は、直近のフォーブスの試算で400億ドル(約6兆円)を突破し、インドネシアで最も裕福な人物となった。

現在79歳の彼の保有資産は、フォーブスが4月に発表した「世界の富豪ランキング」では53億ドルだったが、その7倍以上に急増し、これまで同国で首位だった石炭会社バヤン・リソーシズのロー・タック・クォンの保有資産265億ドルを追い抜いた。

パンゲストゥの富における急増の大部分は、先月インドネシア証券取引所に上場した地熱エネルギーメーカー「バリト・リニューアブルズ・エナジー」の株価急騰によるものだ。同社の株価は、上場以来5倍に跳ね上がり、先週は、1日で25%の急騰を記録した。バリト社の時価総額は現在約450億ドルに達している。

バリト社は、インドネシア最大の地熱発電事業者「スター・エナジー・ジオサーマル・グループ」の持ち株会社だ。調査会社ThinkGeoEnergyによると、多くの火山島からなるインドネシアは昨年末時点で2356メガワットの地熱発電設備容量を持ち、米国に次いで世界第2位の地熱エネルギー生産国とされていた。

パンゲストゥの持ち株会社のバリト・パシフィックは、以前からスターエナジーの株式を保有していたが、彼の別の投資会社のグリーン・エラが昨年、タイのBCPGから4億4000万ドルでスターエナジーの3分の1の株式を取得し、パンゲストゥはスターエナジーの経営権を取得した。

パンゲストゥは最近、石炭への投資からも資産を増やしている。彼が経営する石炭採掘会社ペトリンド・ジャヤ・クリアシ(CUAN)の株価は、3月の上場以来30倍もの上昇を見せており、先週は同社が石炭関連企業ペトロセアの34%を取得すると報じられたことで15%急騰した。同社はまた、インディカ・エナジー社から炭鉱を買収した。

ゴム商人の息子として生まれたパンゲストゥは、1970年代後半に木材販売業を始め、1993年にバリト・パシフィック・ティンバー社を上場させた。彼は、その後、事業の多角化を進め、社名をバリト・パシフィックに改称した。

パンゲストゥは、2007年に石油化学会社チャンドラ・アスリ・ペトロケミカルの70%を買収し、その4年後にトリポリタ・インドネシアとの合併を完了させて、同社を国内最大の総合石油化学メーカーに押し上げた。国営タイ石油公社(PTT)系のタイオイルは2021年、チャンドラ・アスリの株式15%を取得した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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