水素は、石油精製や肥料製造、化学業界で用いられているが、そのほとんどは天然ガスから製造されており、その過程でCO2を排出している。近年は、Plug Power(プラグパワー)や、Cummins(カミンズ)のクリーンテック部門であるアクセラが販売しているような電解槽を使ったCO2フリーの水素製造が普及しはじめている。
しかし、H2MOFや、フォーブスの「30 UNDER 30」に選出されたVerne(ヴェルヌ)のようなスタートアップが、輸送用や車載用の新型タンクを開発しない限り、化石燃料の代替燃料としての水素の普及は限定的になるだろう。
現在、水素はテキサス州やカリフォルニア州のパイプラインを通って輸送されているが、高圧水素ガスによって亀裂が起こる可能性があるため、これらに耐えられる素材を用いる必要がある。
「あらゆる場所にパイプラインを敷設することはできないため、業界は巨大なタンクを積んだ大型トラックによる輸送を検討している。しかし、この方法は非常にコストがかかると同時に、水素を高圧化や液化するために多くのエネルギーを浪費することになる。このやり方ではビジネスが立ち行かなくなるだろう」とタハはいう。
バイデン政権の後押し
バイデン政権は先月、水素燃料の生産と利用を拡大するため「水素ハブ」ネットワークの構築に70億ドル(約1046億円)の補助金を拠出すると発表し、クリーンな水素に前例のない投資と支援を行っている。米財務省も、CO2を発生させずに製造した水素や、水素を用いたCO2の回収に対して、1キログラム当たり最高3ドルの税額控除を認めるガイドラインを発表する予定だ。H2MOFは、水素研究のための助成金をまだ申請していない。同社は、チャンネル諸島にあるジャージー島に本拠を置く非公開企業「レボネンス・テクノロジーズ・インターナショナル(Revonence Technologies Internationa)」の子会社だ。電気工学の博士号を持つタハによると、レボネンスはH2MOFの研究に数千万ドルを投じているという。彼は、同じくレボネンスの子会社であるAtoco(アトコ)の経営にも従事している。アトコは、大気や産業排出物からCO2を除去するナノマテリアルを開発している。
「水素の貯蔵と輸送が技術的なボトルネックとなっている。もし我々がこれらの問題を解決することができれば、需要を喚起し、水素燃料の普及につながるだろう」とタハは語った。
(forbes.com 原文)