トヨタの「クリーン水素施設」がカリフォルニア州で始動

廃棄物系バイオマスからクリーン水素を生成する施設「Tri-Gen」(Toyota Motor North America, Inc.)

自動車メーカーのトヨタの北米事業体のToyota Motor North America, Inc.(TMNA)と燃料電池の発電事業を手がけるFuelCell Energy(フューエルセル・エナジー)は9月7日、家畜排泄物や余剰食品などの廃棄物系バイオマスからクリーン水素を生成する施設「Tri-Gen(トライジェン)」の完成を発表した。

両社はカリフォルニア州のロングビーチ港にあるトヨタの物流拠点のエネルギープラットフォームが完成し、稼働を開始したと発表した。フューエルセル社のジェイソン・フューCEOはこの施設で、農業廃棄物や汚泥から生まれるバイオガスを、1日あたり2.3メガワットの電力と1200キログラムの水素、1400ガロンの水に変換していくとフォーブスの取材に語った。

トライジェンの建設費は約3500万ドル(約52億円)で、敷地面積はバスケットボールコート3面分程度という。

「当社は、カーボンニュートラルな電力とクリーン水素、そして水をトヨタに供給していく。当社のプラットフォームは、ソフトウェアと同様に複数のモジュールで構成されており、今回は3つのモジュールをオンにする」とフューCEOは述べている。

この施設の完成は、米国が二酸化炭素(CO2)を発生させないクリーン水素の利用拡大を推進する中で実現した。カリフォルニア州は長年にわたりクリーンエネルギー計画を支援しており、バイデン政権はクリーン水素に対して1キログラムあたり最高3ドルの連邦税控除を新たに制定しようとしている。

ビル・ゲイツは、あらゆる用途に利用できる水素が、CO2排出量の抑制のための「スイスアーミーナイフ」になると述べている。

世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、トライジェンで製造した水素を、燃料電池トラックや燃料電池車MIRAIで使用する予定という。さらに、このプラットフォームから生まれた電力と水は、トヨタの港湾でのオペレーションと海外の工場から届く年間20万台の新車の洗車に使用される。

トヨタの使用契約は20年間で、年間9000トン以上のCO2を削減できると両社は述べている。トヨタが使用しなかった余剰電力は、地元の電力会社のサザン・カリフォルニア・エジソンに送電される。

フューエルセル社のプラットフォームは、自動車やトラックの燃料電池とは異なり、摂氏600度以上の高温で作動する溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)を使用している。トライジェンのプロセスはCO2を発生するが、そのCO2は回収され、セメントや食品飲料の製造などに使用され、大気中に放出されない。

フューCEOは、トヨタのために構築したこのシステムを他の用途にも使用していくと述べている。「例えば、鉱業分野での利用も想定できる」と、彼は特定の顧客の名を挙げずに説明した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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