アインシュタインリング
ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が今回の発見を成し遂げられたのは、重力レンズのおかげだ。重力レンズは、前方にある天体の重力場が非常に強いために、その周囲の空間がゆがみ、背後にある天体からの光が曲げられ、リング状の像ができる現象。背後の天体の存在を知ることができるとともに、その拡大された像が得られる。著名な物理学者アルバート・アインシュタインがこの現象を予言したことから「アインシュタインリング」としても知られている。重力レンズは、途方もなく遠くにある天体の存在を推察し、その質量を測定するための最善の手段だ。今回の場合、ブラックホールの質量は、それを含む銀河(母銀河)の質量とほぼ同じで、太陽質量の1000万倍~1億倍となっている。これは予想をはるかに上回る質量だ。
確かな兆候
ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡がUHZ1の位置を特定するとすぐに、チャンドラが数週間かけて、銀河から発せられるX線を観測した。銀河団Abell 2744は重力レンズとして作用し、背景の銀河を4倍に拡大した。今回の観測結果は、宇宙初期のブラックホールがどのようにして、これほど急速に成長したように思われるのかを科学者らが解明する助けになるかもしれない。このブラックホールが特に生まれながらに大きかったことを、論文は示唆している。
論文の共同執筆者で、米プリンストン大学のアンディー・ゴールディングは「ブラックホールが形成後に、どれだけ短時間で成長できるかには物理的な限界がある。だが生まれながらに、より質量が大きいブラックホールは、他より一歩先んじることができる」と指摘している。「これは苗木を植えるのに似ている。普通の大きさの木にまで成長するのにかかる時間は、種から育て始めた場合よりも短くなる」
(forbes.com 原文)