注文から座席へのデリバリーまでも、まるでコンピューターゲームのようです。
注文を受けたスタッフがコンピューターに入力、後は席ごと、モニター上に映る順番に処理していくだけ。前日に入社したスタッフでも最適解の手巻きを出せるようなオペレーションシステムになっていますね。このようなシステムを共同経営者のアメリカ人のチームが構築したのだと思います。
KazuNoriのニューヨーク店ではアフリカン・アメリカンのスタッフがハンドロールを作って白人が食べていますが、本当に、そういうフラットな時代になったなあ、と思います。
すでにモデル店舗がいくつも大成功しているので、これを全米、もしかしたら全世界に広げていくんでしょうね。
川井:御社でも、本社のビル1階の山本山 ふじヱ茶房で「カウンターで手巻き寿司」を始められました。
山本:はい。10月2日から、平日のみのオペレーション、4本と6本のセットで提供を始めました。店内のカウンター席でイートインだけの提供です。
川井:「KazuNori」のケースに学ばれたという。
山本:はい、ズバリ準じてるとは言いませんが、明らかにヒントはもらいました。私も、あくまでもハンドロール、手巻きを売りたい。おにぎりよりも、海苔をパリッと食べていただけますからね。「テクスチャー」を楽しんでいただける。
世界でも「冷たいメインディッシュ」は寿司くらい
山本:川井さん、世界広しといえども、「冷たいメインディッシュ」は寿司だけ、と思いませんか?
川井:たしかに。「KazuNori」が寿司飯の温度を52度に設定しているというのも、そのへんの文化からでしょうか。
山本:そうだと思います。酢飯でも完全に冷たいご飯ではなく、ちょっとだけ温かいもので、メインディッシュ感を出したいのではないでしょうか。冷たいと「前菜」になってしまう。
欧米には、「文明人たるもの、(メインの)食事は温かいものを」という概念があるようです。近代文明の証としてのホットディッシュですよね。ですから、考えれば、アメリカで、寿司がメインディッシュとしてのポジションを獲得できたのは、決してあたりまえのことではないと思います。
まずは先人たちが白人に寿司を、生のものを、海苔を食べさせたいという思いから、カリフォルニア巻きを考えついた。そして約50年後の今、ここまでの寿司ブームが立ち現れたのは、食文化の歴史においても大変にエポックメーキングなことだと思いますね。
現状、ニューヨークで1番高い寿司店だと1人1000ドルぐらい「から」のメニュー設定というプライシングからも、米国の食文化において一流のポジションを得ていることがわかります。
同社の最高級海苔を使用した「にほんばし海苔弁当」(税込2200円)、本社のある日本橋髙島屋三井ビルディング1階にある「山本山 ふじヱ茶房」でテイクアウト可能だ。
「オーガニック」から考えるコンビニおにぎり
川井:山本山グループの海外売上げのうち、実に25パーセントがハーブティーとうかがいました。「ヤマモトヤマ USA」「ヤマモトヤマ ブラジル」を立ち上げられ、海外の茶畑でも茶葉を栽培されています。山本:はい、オーガニック市場は、やはり国内よりも海外で確立されています。日本人に「オーガニック」の概念を本当に理解してもらうのは難しい。オーガニックの製品で中に虫が入っているともちろん、日本ではクレームになります。
日本でオーガニックの市場がなかなか育たないことの背景には、この国が「添加物大国」だという背景もあります。