取得率が伸びたとしても、わずかな日数であれば、実態として、中身の伴った男性育児休業が実現しているとは言い難くなるでしょう。こうした点においても、男性がためらうことなく十分に育児休業を取得できるよう、国の制度改革と足並みを揃えた雇用環境の整備が、企業に課された重要な責任となります。
日本の働き方をアップデートする取り組み
積水ハウスは、2018年より、3歳未満の子どもを持つすべての男性従業員を対象に、1カ月以上の育児休業完全取得を推進。休業期間中の最初の1カ月を有給とする独自の制度を運用し、現在まで、取得率100%を継続しています。こうした取り組みのきっかけは、同社の代表取締役社長が、視察先のスウェーデンで男性の育児休業取得率の高さを目の当たりにしたこと。育児休業から復帰した男性従業員への待遇を保障することや、復帰後も育児のための時短勤務を容認することを通して、育児と仕事を安心して両立できるよう男性従業員をエンパワーしています。
ロールモデルとなったスウェーデンの、ペールエリック・ヘーグベル駐日大使は「男性が育児に参加せず、女性の労働を妨げるような状況は、経済的に見て損失が出ている状況。働きたいと思っているのに、育児に追われるばかりに働けない。これは大きな機会損失だと認めなければいけない」と語っています。
取り組みを加速させているのは、企業だけではありません。
岸田政権は、2025年までに公務員の男性育児休業取得率を85%にすることを目標に掲げていますが、公正取引委員会は、すでに目標値を超える87.5%を達成。25の中央省庁の平均34.0%を大きく上回ります。
2015年度には、同委員会でもわずか23.8%に過ぎなかった取得率がここまで上昇した理由の一つは、部下の育児休業取得が上司の人事評価に直結するようになったこと。このことが、育児休業を取るのが当たり前という組織文化の醸成に繋がっています。
男性育休が、社会を変える「てこ」に
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ・レポート2023によると、日本の経済活動への参画機会は146カ国のうち123位と、先進諸国に比べて大きく遅れをとっています。また同レポートは、世界全体のジェンダーギャップを埋めるには131年かかるとしています。男性の育児休業取得が、家庭にとっても企業にとっても自然である社会を構築することは、ジェンダー・パリティ(公正)実現へのレバレッジポイントになり得るでしょう。また、忘れてはならないのは、男性の家事育児への意識と能力の底上げ。夫が育児休業を取得したものの、家事や育児を十分に担わないために、妻の負担軽減に繋がらず「とるだけ育休」となるケースが少なくないことも浮き彫りになっています。
男性が、親になるための知識や必要なスキルを習得することができる機会を増やし、主体的に家事育児にコミットする心構えを後押しすることが、社会をシフトする第一歩となります。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>