直近のミヤケ・イベントは、1030年前および1250年前に生じた。だが、今回新たに特定された1万4300年前の太陽嵐は、これまで確認されたなかで最大であり、直近の2回と比べると約2倍の規模だった。
ミヤケ・イベントの実態の解明は、まだほとんど進んでいない。測定機器を使って直接的に観察されたことがないためだ。太陽活動について、そして太陽が地球上の人間社会にもたらし得る危険については、まだ我々の知らないことだらけなのだ。巨大な太陽嵐の発生原因は何か、発生頻度はどの程度なのか、発生予測は可能なのかといった疑問は、いずれも未解決のままだ。
直接観測されたなかで最大規模の太陽嵐は、1859年に発生したもので、キャリントン・イベントと呼ばれている。英国の天文学者リチャード・クリストファー・キャリントンは同年9月、太陽表面からの大規模な光の放出を観測。ほぼ同時刻に、天文台の磁気センサーでも障害が報告された。その後の数週間にわたり、オーロラが日中に、赤道までの全世界で観測された。
キャリントン・イベントは、現代のような無線コミュニケーションや電子機器の日常的利用が実現するはるか以前のできごとであったため、このとき損傷を受けたのは、幸い電信線だけだった。今回の論文でまとめられた、半化石の樹木に記録されていた1万4300年前の太陽嵐は、このキャリントン・イベントと比べて10倍から100倍の規模だったと推定されている。
米国海洋大気庁(NOAA)の宇宙気象予測センターは現在、太陽活動とインフラへの影響の監視を行っている。電磁シールドのない電子機器は、依然として干渉や受信妨害を受けるリスクが高い状態にあり、同様の極大事象が今発生すれば、我々のテクノロジー依存社会は壊滅的な打撃を受けるおそれがある。
「A radiocarbon spike at 14,300 cal yr BP in subfossil trees provides the impulse response function of the global carbon cycle during the Late Glacial(半化石樹木に見られた1万4300万年前の放射性炭素スパイクが提示する、最終氷期における全球的炭素周期のインパルス応答関数)」と題した今回の研究論文は、学術誌『Philosophical Transactions of the Royal Society A: Mathematical Physical and Engineering Sciences』に、2023年10月9日付で掲載された。追加資料およびインタビューの提供は、リーズ大学の厚意による。
(forbes.com 原文)