「声には法的保護がない」
他のクリエイティブ分野では、著作権で保護された作品がAIモデルの訓練に利用されるのを阻止すべく、作家やアーティストたちが団結して集団訴訟を起こしているが、声優はそれと比べ、弱い立場にいる。人の声は、1人1人異なるのにもかかわらず、知的財産としては保護されていない。ゲーム声優のジェニファー・ロバーツは「声には、顔や指紋のような法的保護がない。私たちができることは限られている」と語る。声優が結ぶ契約には通常、収録した声がAIの訓練に使われることを禁止する条項はない。こうした契約の多くは、AIが登場する以前に作成・締約されたものだ。NAVAの弁護士スコット・モートマンは「声優は、音声録音の将来的な使用についてインフォームドコンセント(十分な情報に基づいた同意)を提供しておらず、それに対して正当な報酬を得ていない」と語る。「AIの登場を受け、保護は大幅に強化される必要がある」
声優はまた、自分の声が死後どのように使われるかをコントロールするすべもない。ゲーム開発企業Hi-Rez Studiosは、声優が死去した場合、その声をAIで複製してもよいと定めた条項を契約に追加したことで、声優たちの猛反発を招いた(この条項は削除された)。声優のクラークは「声優が亡くなった場合、別の人間に交代させるべきであり、何らかの人工的な演技を作成するべきではない。それは本人ではないし、本人を復活させることにはならないのだから」と語る。
こうした中で浮上している大きな懸念は「声優に未来はあるのだろうか?」というものだ。合成音声がクライアントやファンの間で広まる中、声優の多くが、次の仕事を見つけられるか、今の仕事を維持できるかを心配している。NAVAのフリードランダー会長は「自分の声がどのように使われ、どこで使われ、その使用に対していくら支払われるかをコントロールすることは、私たちにとって非常に重要だ」と語った。
(forbes.com 原文)