声優業も生成AIに仕事を奪われる 音声合成ツールへの懸念広がる

AIに置き換えられる声優

フォーブスが声優10人にインタビューしたところ、クライアントがこうした音声合成ツールを試し始めたことで、すでに不安定だった声優業が大きく変化しつつある現状も浮き彫りになった。

ある声優は、クライアントがElevenLabsとの提携を発表した翌日、自分が最後まで担当するはずだったオーディオブックシリーズのナレーションの仕事を打ち切られた。自分の代わりにAIが採用されたのではと考えている。

また別の声優は、クライアントから、ElevenLabsのAIを使ってリテイクを迅速化したいと告げられた。リテイクは収録のやり直しのことで、声優の仕事ではよくあり、報酬も発生する。自分の声がAIサイトにアップロードされることには同意できないと返答したところ、クライアントはそれに同意。だがその後、リテイクに呼ばれることはなかった。

NPO「全米声優協会(NAVA)」のティム・フリードランダー会長によると、声優たちがAI生成音声の急増に気づき始めたのは、アップルの電子書籍アプリ「Apple Books」が2023年1月にデジタルナレーションによるオーディオブックを提供し始めた後だった。声優たちは、聞き覚えのある声の音声ファイル数千件が、主にファンによってさまざまなサイトにアップロードされていることを発見したという。

これまでに数百人の声優が、AI音声生成ツールの「Uberduck」と「FakeYou.ai」から自分の声を削除するよう要請。そうした声優のリストは、スプレッドシートにまとめられ、公開されている。

Uberduckは7月、ユーザー投稿の音声を自社サイトから削除。一方のFakeYou.aiは、現在もジョン・シナやカニエ・ウェストといった著名人数千人の声を提供しており、これらは誰でも使用できる。フォーブスはUberduckとFakeYou.aiに複数回にわたり取材を申し込んだが、返答はなかった。

音声生成ツールから自分の声を削除するよう公に要求している声優の1人が「くまのプーさん」などの人気動物キャラクターの声で知られるジム・カミングスだ。フォーブスの取材に対し、ユーザーが自分の声をテンプレート化することに同意するのは、自分と家族がロイヤリティを受け取る場合に限ると説明。人々の手を動物の足(paw)になぞらえ「Keep your paws off my voice(私の声に足を出すな)」と語った。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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