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2023.10.14 15:00

ビジネスマッチングではない。アトツギ x スタートアップ共創の場が目指す先

督 あかり

グラミン日本は2018年に設立。百野は「日本でも、賃金や契約条件について地方格差や、男女格差があり、見えない貧困がある。

また生活困窮者が手早く稼ぐ手段として、金融詐欺などの被害に遭いやすいなど情報格差も存在します。そこでマイクロファイナンスのほかにも、全国で金融教育を手がけたりしています」と紹介。最近はキャッシュレスやサブスクリプションが広がったことにより、家計のキャッシュフローが分かりづらく、管理が難しくなっているという背景があるという。

「生活困窮者への支援は福祉として行政がやるべき」としてグラミン銀行のような民間の金融システムに異論を唱える人もいるが、百野は意義をこう話す。

「例えばSDGs17の目標において1番目の目標は『貧困をなくそう』なんですね。ですが、課題感が大きすぎたり、日本での貧困が認識されていなかったりして選ばれづらい項目です。グラミン日本では、過去の実績よりもこれからのやる気をみて融資対象を選び、そのための5人1組の互助制度があり、起業ノウハウもたまってきています」

グラミン日本の取り組みを紹介する百野公裕理事長

グラミン日本の取り組みを紹介する百野公裕理事長

岩田が「3人でもなく4人でもなく、(互助制度が)5人組というのは何か訳があるんでしょうか」と尋ねると、岩田は「ユヌス氏が試行錯誤するなか、見出したのが5人組。ロジックを超えたものがあると思います。ただ、男性5人組のパワーはあまり発揮しづらく、互いに支え合う女性に向いているシステムだと言われています」

実際に、愛知県刈谷市のグラフィックデザイナー塚越恭子(ツカエルデザイン代表)はグラミン日本のマイクロファイナンスのコミュニティに参加。女性5人グループで、月2回オンラインミーティングをして、事業の進捗のほか、生活のことを報告し、励ましあったという。

グラフィックデザインの仕事を計27年間手がけた経験を生かし、企業のホームページやロゴマークを制作。現在は、スタートアップ向けに起業時の販促物をセットで販売し、ブランディング支援をする事業が伸びてきているという。「グループに参加する皆さんは住む地域も異なり、知らない人同士がつながることで、しがらみなく相談し合えて励まされることも多かったです」と塚越は振り返る。

このほか、グラミン日本はシングルマザー向けにデジタル人材育成プログラムを実施。自治体と連携し、女性のDXスキル獲得と就労機会の創出を目指す。参加者に向けて百野は「企業の皆さんにも、ぜひこういったソーシャルビジネスに目を向けてほしい」と呼びかけた。

今回は、アトツギ X スタートアップの枠を超えて「ソーシャルビジネス共創の場」を設けた理由として、岩田は「ダイバーシティ&インクルージョンを推進する人材の育成は企業のブランド強化にもつながる。ぜひアトツギとスタートアップの掛け合わせで、新たなソーシャルイノベーションにつながる動きにつなげていきたい」と語る。


▶︎岩田はスモール・ジャイアンツ イノベーターとして活動中!

文=督あかり

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