規格外の「新・中小企業」に日本の未来が見える
デジタル化により世界との距離感が縮まった今日、“海外進出”は会社の規模に関係なく可能だ。事実、地方にある町工場でも顧客がGAFAやNASA(米航空宇宙局)というのは珍しい話ではない。Forbes JAPANはそういった企業を過去6度にわたる「SMALL GIANTS AWARD」で多数見てきた。これらの会社は従来の組織のサイズに収まらず、顧客は海を超え、新しい市場を創造しては後続する参入者も生み出した。まさに「新・中小企業」とでも呼ぶべき特異な存在なのだ。だが、海外で成功しているスモール・ジャイアンツには“勝ち筋”が存在するという─。
それも同賞のエグゼクティブ・プロデューサー内田研一によると、3つある(P36に関連記事)。今回、ここで紹介するのは過去に本誌で取り上げたことがある、世界に認められた企業ばかりだ。その多くは海外からの売り上げのほうが大きい。海外で成功するには何が必要なのか。きっとヒントが見つかるはずだ。
OHTAMA / オータマ
神奈川県川崎市Vol. 104 2023年4月号掲載
ものづくりの製造過程や装置を稼働させる際、外部からの磁気を遮蔽するために不可欠な磁気シールド。オータマは国内シェア77%で、世界でも圧倒的な存在感を示している。成功を裏付けたのは社長の奥村哲也が掲げたグローバルニッチ戦略だ。量産品には手を出さず、半導体、素粒子加速器などの化学分野、医療機器・電子顕微鏡などの分野に特化。半導体デバイスの製造過程におけるマスク描 画装置では、独占に近いシェアを獲得している。
OXIDE / オキサイド
山梨県北杜市Vol. 81 2021年5月号掲載
半導体の検査装置や、がんの診断に使うPET(陽電子放射断層撮影)装置に不可欠な基板材料である光学単結晶を開発・製造。現存するほとんどの単結晶育成技術を保有し、半導体検査装置向けの世界シェアは95%。代表取締役社長の古川保典は、単結晶を利用したデバイスやモジュールなど、素材から最終製品にまで事業範囲を広げ、2023年2月期の売り上げは57.5億円と前年比で20.9%拡大した。
TAKAYAMA INSTRUMENT / 高山医療機械製作所
東京都台東区Vol.56 2019年3月号掲載
1905年創業の高山医療機械製作所。4代目社長の高山隆志は、職人技の機械化を推進し、約20倍の大量生産を実現した。日本の脳神経外科手術の現場では約9割のシェアをもつ、なぎなた型の刃をもつ手術用ハサミ「上山式マイクロ剪刀ムラマサスペシャル」を代表作として、医療用刀剣類を中心に、チタン製の脊髄インプラントなど約70種類を製作する。35カ国以上に販売代理店を抱え、世界の名医が同社製品を愛用している。
SEMCO/ 環境機器
大阪府高槻市Vol. 104 2023年4月号掲載
業務用防虫資材の販売市場で50%とダントツのシェアを誇る環境機器。農薬散布などに使う噴霧器の製造・販売を祖業とするが、現在はメーカーから商社へビジネスモデルを転換。昆虫生態学で博士号を取るなど高度な専門知識をもつ人材を抱え、代表取締役の片山淳一郎は、自社の事業内容を「開発型コンサルティング商社」と表現する。AIを活用した虫監視システムなど、独自商品の開発にも注力。20年間の増収増益を実現している。