アップルの大幅減は、昨年同期の出荷台数が多かったためだ。同社は昨年、新型コロナウイルス感染症の影響で滞っていた出荷を急ぎ、結果的に台数が膨らんだ。
IDCが発表した2023年第3四半期の各メーカーのPC出荷台数と市場シェアは以下の通り。
1位 レノボ(1600万台、23.5%)
2位 HP(1350万台、19.8%)
3位 デル (1030万台、15%)
4位 アップル(720万台、10.6%)
5位 エイスース(490万台、7.1%)
その他(1630万台、23.9%)
減少幅が最も大きかったのはアップルだが、デルとエイスースも2桁の減少幅となり、デルは前年同期比14.3%減、エイスースは同10.7%減。レノボは5%減にとどまった。
市場全体が落ち込む中、HPだけは出荷台数を伸ばし、前年同期比6.4%増だった。全体の出荷台数が560万台減った中で、同社は100万台近く増やした。アップルと同様、これは大きな市場の変化ではなく、むしろ「在庫の正常化」によるところが大きいとIDCはみている。
だが、PC市場が安定してきたという見方もある。IDCによると、ここ2四半期は成長が続いている。スマートフォンが主要なデバイスとなって以来、PC出荷台数は毎年減少してきたが、ここへきて減少率は鈍化している。今後、生成AI(人工知能)のパソコンへの導入が追い風となるかもしれない。
IDCのリン・ファン副社長は「生成AIはPC業界にとって転機となる可能性がある」と指摘。「AI搭載のPCは、データのプライバシーと主権を確保しつつ、より深いレベルでユーザー体験をパーソナライズする能力を有する。このようなデバイスが来年多く発売されれば、販売価格全体が大幅に増えることが予想される」としている。
だがそれは夢物語かもしれない。
ほとんどの生成AIアプリケーションはクラウド上で実行されている。趣味でオープンソースの生成AIパッケージを自分のPC上で動かしている人もいるが、大半はクラウドや専用のサーバーファームで実行されている。生成AIアプリはオンラインで即時利用ができ、ユーザーは複雑でボリュームのあるソフトウェアパッケージを自分のPCにインストールしたり微調整したりする必要はない。ChatGPTも、アドビの生成AIツールもオンラインで動作する。AI活用のサービスをまとめているサイト「There's An AI For That」にある生成AIツールはほぼすべてオンラインで利用できる。
低迷しているPC市場だが、良い側面もある。それは、世界の電子機器のサプライチェーンを多様化して信頼性を高めるチャンスだということだ。
IDCのリサーチマネジャー、ジテシュ・ウブラニは「業界の低迷は中国以外での調達・生産を模索する機会となっており、これはPCに搭載するAIの進歩に次いで今後も重要な課題となる」と指摘している。
(forbes.com 原文)