2017年に創設されたNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」は長年、クリエイター重視の姿勢を打ち出して業界トップに君臨してきたが、昨年10月にローンチしたばかりの「Blur(ブラー)」にその座を奪われた。
OpenSeaは、NFTの二次流通での売却益の一部をロイヤリティとしてアーティストに還元してきた。だがBlurは、トレーダーから手数料やロイヤリティを徴収しないことで市場シェアを急速に拡大し、2月にはNFT取引サイトのトップに躍り出た。
その結果、OpenSeaは9月1日付で、クリエイターへのロイヤリティ支払いを義務付ける方針を撤回し、トレーダーにロイヤリティ支払いを強制するためのツール「Operator Filter」を廃止した。暗号資産メディアのThe Blockによると、NFT市場全体の取引高は2022年1月の約53億6000万ドルから、今年8月には4億1000万ドル(約600億円)まで急減。苦戦するこの市場におけるOpenSeaのシェアは30%以下に急落している。
コンピュータで生成されたアートの価値はもとから急落しているが、長期的なロイヤリティの保証がなくなれば、アーティストがNFTアートを制作するためのモチベーションも弱まることになる。
NFTブームを牽引したロイヤリティ
ブロックチェーンに紐付けられたNFTアートの注目度は、2021年にデジタルアーティストのBeepleの作品が、クリスティーズのオンライン競売で約6935万ドル(当時の為替レートで約75億円)で落札されたことで一気に高まった。マーケットプレイスに作品をアップロードすることで、大金が得られることに気づいた人々は、OpenSeaを筆頭とするマーケットプレイスに殺到。アーティストやコレクターを含むNFTの愛好家たちは、ブロックチェーンに紐付けられたアートが、伝統的なアート市場を民主化し、大手のギャラリーや資金力のあるバイヤーが支配する不透明なシステムを時代遅れにするとも主張した。アーティストにとってNFTの魅力の一つは、ブロックチェーンの分散化システムによって、作品の二次流通市場での販売ごとに10%程度のロイヤリティを得ることができるというものだった。例えば、Beepleが1ドルで売り出した一連の作品は、厳選されたアーティストのみが参加を許されるNifty Gatewayと呼ばれるマーケットプレイスで数十万ドルもの高値で転売され、そのたびに1点あたり数万ドルのロイヤリティをBeepleにもたらしたとされている。
この市場のリーダーだったOpenSeaは、新興勢力のBlurをはじめとするロイヤリティ非徴収マーケットプレイスを締め出そうとしたが、市場は味方しなかった。トレーダーたちは、ロイヤリティ支払いを強制しないBlurのポリシーに魅力を感じ、OpenSeaのシェアは減少していった。The Blockのデータによると、OpenSeaの市場シェアは8月に27%にまで激減したが、その一方でBlurのシェアは、60%に急拡大した。